超私的映画感想日誌アーカイブス
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  数字



 (○は邦画@はアニメ)
 計13本
マザー
 マザー・テレサ
 魔女
 マッチ工場の少女
 魔笛
 まぼろしの市街戦
幻の光
マリア
 マリアの輝く星
@マリといた夏
 マルメロの陽光
 マレーナ
 
真夜中の虹

マザー(TV)
演出:佐々木昭一郎
出演:横倉健児、クリスチャンヌ・ジャヌレー、正津房子
1971年 TVドラマ 日本 57分 カラー (CS)
 佐々木昭一郎のデビュー作で早くも国際的な賞を受賞。下の「無防備都市」のロベルト・ロッセリーニ監督が大絶賛をしたという傑作といわれている作品です。
 舞台は神戸の港。いきなり「赤ん坊が捨てられていた」というような出だしで初まり「夢の島少女」で少年を演じていた横倉健児がまだ8〜9才くらいのとてもかわいい幼い少年で出てくる。
 この少年の生活背景などは全く描かず、母親を知らない少年の心象風景を神戸の港に集まる異国の人々(インド人女性やスイスの女性)と交えながら綴っていくというもの。ドラマでもなければドキュメンタリーでもない。孤独で行く当てのない少年は「天国ってどんなところ?」「死んだらどこにくの?」というようなことを何度も何度も異国の女性に質問しながらいくシーンと、詩のようにその心象風景的な映像を綴っていくのは逸脱。というか今まで見た事もないような映像の展開が新鮮で驚きでした。  「マザー」というには、ジョン・レノンの曲ともかぶっているようだし、ところどころで出てくる寂しげな口笛や老人がひく楽器の音楽も印象的です。
 けして社会派ではないし、あまり一般受けしない作品かもしれませんが、私はこういう感じの映像詩は独特な寂しさと清いものがあって、その表現も好きです。(笑)(06.06/09)




マザー・テレサ
MOTHER TERESA
監督:ファブリッツイオ・コスタ
出演:オリビア・ハッセー、セバスティアーノ・ソマ
2003年 イタリア・イギリス映画 116分 カラー (静岡サールナートホール)
★★★★
 久々にサールナートホールへ行って「マザー・テレサ」と「モディリアニ〜真実の愛〜」を観てきた。「マザー・テレサ」の方は人気が高く、いつも上映している3Fの小ホールではなくて1Fの大ホールだった。
 実は、恥ずかしながらマザー・テレサの事は、ノーベル平和賞をもらったインドの女性で貧しい人たちを助けた・・・という漠然としたことしかしらなくて、何故、白人の女性がインドでいるのかという経緯や、何が、そこまで彼女をさせたのだろうか・・・ということなど、全く知らなかったので、この作品を観て、彼女の歩んだ軌跡とその意思を明確にみてとれたことは、とても意義あることだったし、この映画をみた多くの人の感想を読むと、私と同じようにマザー・テレサについてよく知らない人がよく理解できたということが多いみたいです。これも映画のひとつの役割だろうと思うのです。
 でも、彼女の軌跡を本当に描こうとすれば、映画の2時間というのは短いだろうとは思うけれども、それでも、どれほど強い意志でもってその困難な道を乗り越えてきたか・・・またローマ教皇の暖かい支援も感じられました。
 特に脚色もせず、全くマザーテレサの軌跡をそのまま描いた映画だったが、その作風がとても良かったと思う。変に脚色したら実際に存在した人物や事実に映画が負けてしまうだけだと思う。それは後でみた「モディリアーニ」で如実に感じた。それはまた次回・・・
 オリビア・ハッセーはこの役を20年待ち続けたというだけあって、マザー・テレサに動作やしゃべり方などすっかり真似て上手かったです。全く違和感なく、まるで、本当のマザー・テレサのように見えました。また1940年、1960年代のインド・カルカッタの街の雑踏や駅の雑踏の雰囲気などもカラーで観れるのは良かったです。
 いろいろと自分自身についてもどうあるべきかな・・とか考えさせられる映画でもありました。まだ観ていない人、マザー・テレサってどんな人??と詳しく知りたい人は是非ご覧ください。(05.11.04)




魔女
Haxan
監督:ベンヤミン・クリステンセン
出演:ベンヤミン・クリステンセン、エラ・ラ・クール
1921年 スウェーデン映画 104分 サイレント 白黒・染色プリント (DVD)
★★★★☆
 紀伊国屋クリィティカルエディション第4段はクリステンセンの「魔女」でした。ずっと観たかったので願ったり叶ったり。神秘的な作品というのが第一印象。話に聞いていた通り、いわゆる一般の映画とは異なったつくりの映画で、まるで大学の講義を聞いているように最初の章は魔女についての歴史などがスライドのように流れる。
 文学や劇作品を映画でみせるという一般的な映画とは違って、学術・ドキュメンタリー的な感じではあるけれど、底辺にあるのは劇映画であるらしく、クリステンセン自らが悪魔を演じるなど、中世の悪魔たちや魔女裁判などの再現劇は出てくる老婆たちは、本当にみんな本物の魔女なんじゃないかと思うほどリアルでしたね。
 ラスト近くになると現代の医学の点から「魔女」がいわゆる女性のヒステリック症が誤解されたもの..という見解になる。当時夢遊病とかが魔女扱いにされたのではないか..という。そういえば、最近NHKのコマーシャルか何かで「女性の鬱病は男性の2倍くらいいるって知ってましたか?」とかいうのをテレビで観たことあったのですが、「へーー!」と思いました。私には女性って男性より現実的でしたたかで強いイメージがあったので、ちょっと驚きました。実際には女性の方がやはり弱いしややこしい複雑な生き物なのかもしれません。あと、やっぱり中世時代に「魔女」の嫌疑をからけられるような人ってすごく不器用な生き方しかできなかった人たちなんじゃないかと。。私ももしかしたら、こんな時代に生まれていたら「魔女」にされてたかも..と思うと、なんか同情しちゃいますね。この映画に出てくる坊主はどの人も魅力なしで好きになれません。。(笑)
 あと、この作品はもともとは「迷信」というものをテーマに三部作をつくる予定であっったらしい。第二作は「聖女」第三作は「亡霊」。いずれも、こういう観点から映画つくりされるようだったら、みてみたかったなー。(06.08.08)




マッチ工場の少女
THE MATCH FACTORY GIRL
監督:アキ・カウリスマキ
出演:カティ・オウティネン、エリナ・サロ
1990年 フィンランド映画 70分 カラー (レンタルビデオ)
★★★☆
 あらためてカウリスマキってブレッソンに似てると思った。この作品ではあのカティ・オウティネンが本当に少女だ!!まだ20年もたっていない映画なのに。。
 マッチ売りの少女に多少なぞらえたのだろうか..とにもかくにもマッチ工場で働く少女はどんどん不幸になっていくお話。「マッチ売りの少女」がおとぎ話にくらべ、この作品はなんて現実的なんだろう。少女は働かない親の家賃を払う為に働いている。少女は派手なドレスに憧れて給金で買い求め、酒場に行くがそこである男性と知り合い、一夜をともにする。自分を愛してくれていると思っていたその男性は、あっさり彼女を捨てる。落胆する少女。しかし、その後で彼の子供をみごもったことがわかり、彼とコンタクトをとろうとするが...
 私はもっとあっさりと捨てられる話なのかと思っていたのですが、結構、男性を両親に紹介したり何度もアパートを訪ねていったりと人間らしい付き合いの展開があるわけですね。そしてラストのオチというか結果的なことというのは、うーーん、そうしたい気持ちはよくわかるという感じかな。ブレッソンの「ラルジャン」的救いのない不幸な結末。しかし、したたかな少女の行動は多少、胸のすく思いも映画ならではのことでしょう。アキ作品らしく音楽の使い方といい、なんともオツな作品でした。(06.04.28)




魔笛
Die Zauberflote
監督:イングマール・ベルイマン
出演:ヨーゼフ・ケストリンガー、イルマ・ウッリラ
1974年 スウエーデン映画 145分 カラー (DVD)
★★★★☆
 最近、ちょっといろいろ忙しくて、ゆっくり映画を見ている時間がありませんー。ちょっと前ですが、ベルイマンの「魔笛」のDVDを見ました。モーツアルトの「魔笛」をベルイマンが演出したオペラ映画。これは良かったですー。ベルイマンの舞台をいつか見てみたいと思っていましたが、ベルイマンらしいすみからすみまできっちりとした演出に、音楽が素晴らしく、またファンタジーが溢れる、素晴らしい舞台の空間が出来上がっていました。この空想的な感覚はベルイマンならではです。  ある王子さまが捕われの身になったお姫さまを救いに行く・・というお話ですが、もちろん、恋の故に救いにいくわけですね。そして魔法の力を持つという笛に導かれて、絶望と死を乗り越えて生の喜びを獲得するというストーリー。役者さんはみんな歌が上手い..というものの、ものすごく個性的という感じではないのです。けれど、3人の子供の妖精?のそれぞれの表情が全然違ってて、本当に可愛らしいこと、そして太陽の王、ゆかいな百姓のパパゲーなどは主役よりも印象的でした(笑)。またラスト近くの死と絶望のシュールな舞台表現はさすがはベルイマン。 あと、舞台の合間に出てくるベルイマンの娘さんの少女の表情が機知に富んでて、なかなか良かったです。こういう編集もあり・・なんですね。  パパゲーの「ピロロロロロ〜♪」という笛の転がるような音が、頭の隅にしっかり入ってしまったようで、時々聞こえてきそうです。(笑)(05.07.22)




まぼろしの市街戦
LE ROI DU COE0.UR/KING OF HEARTS
監督:フィリップ・ド・ブロカ
出演:アラン・ベイツ、ピエール・ブラッスール
1967年 フランス・イギリス合作映画 102分 カラー
★★★★☆
 岩井俊二が「PICNIC」をつくる構想となったらしい、映画ファンにとっては大傑作ともいわれているらしい・・・フランスのカルト映画「まぼろしの市街戦」を見る。すごい面白かった!!1967年の映画だけれど、カラーもとても美しくって、こういう映画を見ると、映画っていうのは、CGなどで技術は上がってきているけれど、質は時代とともにだんだん落ちて来ているのかな〜...とまで思ってしまう。
 フランスの辺鄙な田舎町のお話。最初のナレーションが「これは第二次世界対戦中のお話なのです♪」っていう感じですごくラブリーに始まるので思わずそこから笑える。この街に駐留していた ナチス軍は、撤退と同時に街の鐘つき人形に爆弾をしかけていく。爆弾がしかけられた噂は街中に広がった為、人々はみんな逃げだして誰もいなくなり、連合軍の伝書バト係りの男が一人、誰もいなくなったこの村へ、爆弾を取り除くよう命令されて入ることになる。人っこ一人いない街だったが、精神病棟にたくさんの患者さんが残されたままで、彼等は、誰もいなくなった街へ病棟からでてきて、伯爵や司教や売春宿のおかみなど、それぞれ好きな役になりきり、街で住みはじめて彼等だけの独特な世界をつくってしまう。一方、伝書バトの男は、彼等から「王様」に祭り上げられて、「あなたのオヨメさんにして♪」というかわいい恋人までできてしまっての大騒ぎ。
 「この街には爆弾が仕掛けられているんだぞ!朝になったら、みんな死んでしまうんだぞ!なんとかしないと!!」といくら男が言っても、みんな聞く耳をもたず、遊び暮らしている。男は、なんとかみんなを救おうとあの手この手を考えるのだが..
  正常と言われている世界の戦争がまともなのか...、それとも、異常と言われている世界の平和がまともなのか・・もろに戦争を諷刺した見事なコメディ。この映画を見ると、戦争ってまともな人間達の狂った姿..としか思えない。今回のイラク人虐待ともだぶって見えてしまう。
 それと、この映画をよ〜〜く見ていると、実は、精神病患者達は、精神病のふりをしているだけで、実は、まともな人達なんじゃいか..例えば「自分は子供の時のように楽しく生きる為には、世界の人達から離れればいいことに気がついたんだ」とある患者が告白するところや、また「王様」の筈の男に向かって「あなたはもともと兵士でしょ?」と実は、なにもかもわかっていたり....これは一体全体、この人達はどういう人達なんだろう〜〜??と、私は、何故かそこが一番気にかかってしまった。
 まともでいる..ということは、一体どういうことなんだろう..世界から離れることなのか..それとも、主人公のように、奔走することなのか、どうあるべきなんだろう..とか..いろいろ思うのですが、答えはまだ出ていないのでした。(05.04.09)




幻の光
監督:是枝裕和
出演:江角 マキコ、内藤 剛士、 浅野 忠信
1995年 日本映画 110分 カラー
★★★★☆
 是枝監督のデビュー作。宮本輝の同名の小説を映画化したものらしいけれど、たいてい、そういう映画は原作が読みたくなってくるものなのですが、この映画は映像がすごく良くて、どういうわけか小説の方を読んでみようという気にならないほど、結構、満足してしまいました。
 尼崎に住んでいる主婦のゆみ子は、幼い時に祖母が失踪する..というトラウマを持つ女性。ある日、まだ生後3ヶ月の子供を残して夫が謎の自殺。線路を進行方向へ歩いていたところへ列車に轢かれた..というものだった。
 それから何年かして、ゆみ子は能登半島の漁村の家へ再婚する。再婚した夫も、前の妻を亡くしていた..。だんだん漁村の生活にも慣れて、一見、落ち着いたようでもあったが、ゆみ子は前の夫の自殺の動機がどうしてもわからない・・苦しむゆみ子に夫は「そういう事もあるんとちゃうか??」と「幻の光」の話しをするのだった。
 関西弁が自然で良かった。ちょっと暗いかな..と思えるほどの映像も、すごくマッチしていたと思う。薄ぐらい夜の部屋に、海からの波の音が聞こえるのも、私も旅館などで経験したからよくわかるのですが、確かに静かな夜には「騒がしい」ほど波の音が良く聞こえる..主人公の沈んだ静かな心理描写が良く出ている場面だと思った。全体的に、ちょっと重いヨーロッパ映画を観ているようだったけれど、すごく好きな感じの映画でした。
 最後の、現在の夫の「幻の光」の話しが本当に優しい感じだった。人間って生きていたら救いは必ずあるのかな〜..と思いました。
追記:自殺する前夫役で出ていた浅野忠信が、前半しか出てこないのですが、その後の物語の展開に、ずっと不思議な存在感を残して良かった。全体的に、役者さんのアップが出てこなくて、現夫に内藤剛志であることも、最後までわからなかったくらい。遠目の撮影も良かったと思う。(04.11.02)





マリア
監督:岩井俊二 
出演:中嶋唱子/鮫島伸一
1992年 24分 カラー
★★☆
処女懐胎をテーマにした寓話劇。地味で美人とはいえない太めのOLが、覚えがないのに妊娠してしまう。堕胎しようとしたが、胎児は急激に成長。手には十字架の赤い血のしみが・・・。といっても全然宗教色はないといってもいい。主役のOLを演じた中島唱子が、あったかい雰囲気で結構良かった。後味の良い作品でした。 (05.07.01)




マリアの輝く星
ARE SKYER BEVEGER STJERNENE
ONLY CLOUDS MOVE THE STARS
監督:トールン・リアン
出演:ヤン・トーレ・クリストファーソン、テア・ソフィー・ラステン
1998年 ノルウェー映画 98分 カラー (レンタルDVD)
★★★☆
 劇場未公開の作品。最近、そういう映画がDVDになってどんどんTUTAYAなどに置いてあるのでちょっとびっくり。家族の絆を描いたファミリー向けのヒューマンドラマ。癌でわずか9歳だった弟を亡くした少女マリア。話は弟のお葬式から始まる。父と母、弟という4人家族だったマリアの家には「もう神様なんか信じない」とマリアが言う通り、深い悲しみに陥る。中でもママの精神状態はほぼ壊れかかってしまい、マリアの事が全く目に入らないという状態。「もう子供じゃないんだから」とマリアは周囲に大人ぶってみせるものの、まだまだお母さんの愛情が欲しい年頃なのだ。彼女は愛情にすっかり飢えてしまい、学校でも家でも自閉症気味になってくる。そんな時、マリアは田舎に住む祖父母の元へ預けられ、そこで、奔放な少年ヤコブに出会い、だんだん心を打ち解け始める。 
 かけがえのない子供を失った家族のどん底の不運と悲しみを乗り越えていく姿をマリアという少女を通して描いていて、少年ヤコブの存在が暖かくて張りつめた緊張を和らげてくれる。私はヤコブが亡くなった弟の幻だったとか、身代わりだったとか、何かそういう実在の少年じゃないのではないかという感覚を持ちましたが(なぜなら、彼のお母さんなどが全く出てこないので)そこまでのファンタジー性はなかったみたいです。とにかく彼は最後まで透明感のある不思議な存在だったし、マリアも北欧系の顔立ちをした美しい少女で印象的でしたね。(06.02.16)




マリといた夏
監督:イ・ソンガン
声優:イ・ビョンホン、アン・ソンギ
2002年 韓国映画 80分 アニメーション (渋谷イメージフォーラム)
★★☆
 う〜〜ん、絵がとてもきれいだったので見に行ったのですが、これがもうひとつ、話が浮いた感じで、最後まで何が何かよくわからなかった。こんなに入り込めなかった映画も珍しい。
 社会人になった青年の、子供の頃の思い出話らしい。12歳の頃、幼なじみの友人と過ごした夏の不思議な体験を綴ったストーリーらしいのですが、どこがどうして、こんなによくわからずに終わったのか・・・それすらもよくわからないという、見終わった時に狐につままれたような気持ちでした。
 ビー玉とか、焼き肉屋とか、昔懐かしい感じの海辺の田舎町、小学校時代の初恋、灯台でトトロのような大きな犬に出会う不思議体験・・・と宮崎駿アニメを彷彿とさせるテーマなどは決して悪くなかったと思うのですが・・・
 絵は全てCG。静止画として見ると、とても美しい絵なのですが、動画になると、これが、のっぺりとして味気ない感じでした。
 アヌシー国際アニメーションフェスティバルで受賞の作品ということなのですが、やはり商業アニメーションといういよりは、アートアニメーションの色が濃いのかも。だから、こんなにわかりにくいのかな・・と考えて独りで納得。中編・長編のアニメにするには、もう少し、ストーリー構成とか練らないとダメのような気がします。特にノスタルジーをテーマとするならば・・・。ということで、韓国アニメーションの今後に期待です。
あと、声優がイ・ビョンホンだったせいか、女性の観客(特に中年の女性)が多かったです。(05.09.02)




マルメロの陽光
El Sol Del Membrillo
■監督:ヴィクトル・エリセ
■出演:アントニオ・ロペス・ガルシア、マリア・モレノ
1992年 スペイン映画 139分 カラー
★★★★★
◇スペイン絵画のリアリズムの巨匠アントニオ・ロペスの制作過程をカメラで追うドキュメンタリータッチの映画。自宅の庭に植えたマルメロの実を陽光が射すわずかな時間の間に描こうとする画家と彼を取り巻く家族・友人の暖かい交流。カメラワークがとても美しい作品。
<ネタバレあり> この作品はストーリーがなく、スペイン絵画のリアリズムの旗手、アントニオ・ロペスにカメラをあて、彼の制作過程をドキュメンタリータッチで描いた作品。アントニオ・ロペスの庭に植えている1本のマルメロの樹を彼がつぶさにキャンパスに描いていく様を追っていく。ヴィクトル・エリセ監督の前作「ミツバチのささやき」や「エル・スール」に少し及ばない..という評もあるようですが、もしかしたら私が一番好きな作品かもしれない。
 それは私自身が絵というものに深い入りしているせいもあると思うけれど、物語のないところには演技もなく自然な営みが写し出されるだけ・・・けれど私はこの作品のそこが好きなのです。
 マルメロの樹を前に、彼は自分の立つ場所を印し、縦糸や横糸を貼ってマルメロの実の位置を筆で印していく、雨に濡れないよう、テントを貼る、マルメロに絶妙な陽が当たるわずかな時間を狙って少しづつ、少しづつ描いていきます。
 絵を前に彼の友人や家族と交わされる会話、彼のマルメロの樹に投げかけられる視線、陽の光り加減やマルメロの成長を気にしながら描いていく様子..全てが穏やかで暖かく静かに流れていく。そして、制作は悪天候の為、中断される。
 たわわになるマルメロ。。それを描く時間が、彼にとってのなんという至福の時間だろう。ロペスの「マルメロを描く作業というより、私はこの樹と一緒に過ごしていることが好きなのだ。完成しようがしまいが関係ない」というこの言葉が印象的。
 絵を描く..という長い孤独な作業の中で、孤独ではあるけれど「寂しさ」を全く感じないのは、この至福に満たされるからであると思う。そしてエリセ監督の映画美術(芸術)に対する同等の姿勢がアントニオ・ロペスのこの制作過程の中で一緒に伝わってくるような気がするのです。
 マルメロはやがて地に落ちて、腐っていく。無人なのに カメラはまるで独りで廻っているかのように、それらのものを写し出します。そのシチュエーションもとても美しい。もしかしたら、これは私の考え過ぎかもしれないけれど・・全てのものには「旬」があり「絶好の機会」がある・・けれど、それを逃すとあとは腐らせるより他ない..というようなこともふっと思うのです。(2004.3.6)




マレーナ
Malena

■監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
■出演:ジュゼッペ・スルファーロ モニカ・ベルッチ
2001年 イタリア映画 92分 カラー
★★★★
◇美女マレーナに恋心を寄せる少年の目を通して戦争とファシズムの現実を描いた作品




真夜中の虹
Ariel
■監督:アキ・カウリスマキ
■出演:トゥロ・パヤラ、マッティ・ペロンパー
1988年 フィンランド映画 73分 カラー
★★★★★
◇炭鉱夫だった男が炭坑の閉鎖後、有り金を全て持ってオーブン・カーで南へと向かうも途中で暴漢に襲われてお金をとられ・・・・。不幸続きの男の話しだがラストシーンはほのぼの。
<ネタバレあり> ちょっと北野映画風ハードボイルド。炭鉱夫だったカスリネンは炭坑の閉鎖、父の自殺に直面し、有り金を全て持ってオーブン・カーで南へと向かう。ところが途中で暴漢に襲われてお金をとられ、日雇いで生活をしているうちに一人の女性と出逢い暮らしはじめる。その女性は離婚歴があり小さな男の子が一人いる。ところが幸せも束の間、以前襲われた暴漢を見つけて仕返しをしたが、今度は警察に見つかり自分が投獄される・・・・
 不幸続きの男の話し。なんとなく出てくる人みんながちょっと無表情な感じで淡々としているのだけれど、私は途中からカスリネンが恋した女性の一人息子の小さな男の子の視線で観ていて、次ぎはどうなるのか..と、結構どきどきしながら観ていた。
 ラストシーンでカスリネンと女性とその小さな息子と船に乗ってメキシコへ逃げようと、夜の海を小舟で渡っていく。そこでバックミュージックにどこかで聞き覚えのある歌(フィンランド語の「虹の彼方に」という曲らしい)が流れるのだけれど、この映画を真夜中にひとりで観ていると、メキシコに逃げるという展開がハテナ??と思いつつ、ほんわり、ジ〜ンと暖かい気分になってくるので、なんだか不思議でちょっとオツな作品です。