超私的映画感想日誌アーカイブス
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  数字



 (○は邦画@はアニメ)
 計5本
 野いちご
 ノスタルジア
@ノーブラ
野ゆき山ゆき海べゆき
野良犬

野いちご
Smultronstallet
監督:イングマール・ベルイマン
出演:ヴィクトル・シェストレム、 イングリッド・チューリン
1957年 スウェーデン映画 90分 白黒 (レンタルビデオ)
★★★★
 ベルイマンの「野いちご」というと映画史に残る名作らしいです。私は「野いちご」という題名のイメージから乙女が主人公かと思いきや..老医師のお話でした。(^^;
 最初の15分くらいの展開で、やっぱりベルイマンだ〜と唸ってしまった。老医師イサクは、名誉博士号を授与されることになり、式に赴くその前夜に自分の死体を見るという奇妙な夢を見る..その夢の展開がすごい。全く人気のない通りに立ちすくむ老医師のイサク、止まっている時計、何か空気が歪んでいるように感じる..そこへ後ろ向きに立っている一人の男。思わず声をかけると振り向いたその顔はのっぺらぼう..と液体のように溶け出してなくなってしまう・・そこへ棺桶を担いだ無人の馬車..車輪が柱にひっかかり、棺桶は転がり落ちる..その棺桶から自分が手をのばしてでてくる..という息を飲むようなシーン。
 そんな夢を観たイサクは飛行機で式に行くのをやめて家に帰ってきていた息子のお嫁さんマリアンヌ(イングリット・チューリン)と車で行くことにする。その道中、昔住んでいた屋敷立ち寄ったり、年老いた母を訪ねたりしながら、老人は昔の自分の恋人..弟にとられてしまって弟のお嫁さんになった・・サーラという少女の夢を観たり、また自分の妻の浮気の現場を目撃した時のことなどを回想していく。
 「室内劇」が多いベルイマンの作品の中では珍しいロードムービー。道中、昔の恋人と顔もそっくり名前も同じサーラという少女と二人の男と一緒になり一緒に車に乗って道中を共にする。この二人の男とサーラという少女は三角関係っぽい感じで、これが昔のイサクの恋人と弟との三角関係にも似ている。また、事故をおこしかけた夫婦も一緒に車に乗ってくるのだが、この夫婦は激しい喧嘩をしてばかり。ついにマリアンヌに途中下車させられる。この夫婦のきまずさ、ちぐはぐさ..これもイサクともう既に亡くなった不貞のあった妻と関係とオーバーラップさせる。そして自分のこういった夫婦仲の悪さが原因で息子のエヴァルドが子供を欲しがらない..という苦悩をマリアンヌに打ち明けられる・・
 道中のイサクの過去の回想シーンと現在の人間が、奇妙にオーバーラップしてくる。最後に授与式を祝福する若者の三人組。特にサーラという少女が「おじいさんに会ったことは一生忘れない」というようなことを言う場面は、昔の恋人とも重なる感じで、孤独な老人の心をどれだけ癒しただろう。最初の凍りつくようなシーンから緩やかに心がほだされていくような感じで、若者の純粋さは本当にいいなあ..と思う場面でした。
 イングリット・チューリンが若くて、ナイスなお姉さんでこれまた、びっくり。先日の「叫びとささやき」とは全然違う人です(笑)。
それにしてもベルイマンはこの作品を何歳で撮ったのだろう。結構若くして、こういう老心境というか人生を全部眺めまわすような作品をつくるなんて、やっぱり成熟した監督さんだと改めて思いました。(05.04.28)




ノスタルジア
NOSTALGHIA
■監督:アンドレイ・タルコフスキー
■出演:オレーグ・ヤンコフスキー、エルランド・ヨセフソン
1983年 イタリア・ソ連映画 126分 カラー
★★★★★
◇自殺した音楽家の足跡を訪ねるためにイタリアにきたロシア詩人と通訳の女性。彼等はそこで神から啓示を受けたと言われる狂人に出逢う。詩人のロシアへの望郷の思いと狂人との約束。映画の一こま一こまがシャルダンの油絵を思わせるような美しさと静けさ。狂人との約束を果たすシーンもじっと息を飲んで見つめてしまうような繊細さ




ノーブラ
SIN,SOSTEN
監督:レネ・カスティージョ&アントニオ・ウルティア
1998年 メキシコ映画 4分 カラー クレイアニメ
★★★☆
 おまけでついていたメキシコのクレイアニメ。これが結構、4分と短いけれど、意外に良かったですね。チェコのアニメに「落下」というのがあるようですが、どちらが先の作品なのか・・。とにかく夜の街のさびれたアパートの住人達とか、巨大な広告のモデルとか幻想的ですらありました。人形の顔の凹凸がありすぎて、それがちょっとなじめませんでしたが・・・なかなか面白い作品でした。(05.08.27)




野ゆき山ゆき海べゆき
■監督:大林宣彦
■出演:鷲尾いさ子、林泰文
1986年 日本映画 135分 カラー
★★★★★
◇戦時中の日本。戦争の影が忍び寄る尾道で「わんぱく坊主」や「ガキ大将」が健在していた時代のお話。小学校へ理由(わけ)ありの少年が2年遅れで転校してくる。彼の腹違いの姉はこの町一番の美人でみんなのマドンナ的存在。一人の少年の目を通して反戦を訴えた作品。
<ネタバレあり> 戦時中の日本。戦争の影が忍び寄る尾道で「わんぱく坊主」や「ガキ大将」が健在していた時代のお話。小学校へ2年遅れの理由(わけ)ありの少年がで転校してくる。彼の腹違いの姉はこの町一番の器量良し、みんなのマドンナのお昌ちゃん。でも彼女には心に決めた人がいる。お昌ちゃん役にこの映画が初出演の鷲尾いさ子が新鮮な魅力で演技している。
 またこの映画の主人公的存在で映画のナレーターもつとめている当時9〜10才と思われる林泰文少年が、大林映画にぴったりの相性を思わせるユーモアある上手い演技で映画全体を楽しませてくれる。
 この転校してきた少年、なかなかたくましい子なので子供達の間ではボス争いで諍いが耐えない。お昌ちゃんもそんな弟を心配している。林泰文が演じる須藤少年は機転のきく子供で、そんなお昌ちゃんの為に「戦争ごっこ」を提案。様々なルールをつくり秩序ある喧嘩ごっこを始める。
このあたりは大人の挙動や当時の時代背景が大きく子供の世界にも影響していることを伺わせる。篠田正浩監督の「少年時代」にもこういった子供の世界が描かれている。
 最初はルールに従っていた戦争ごっこもやがて感情が先走った無秩序な暴力へと変わっていく。そんな子供達の様子を「最初は人間がつくって操っていた『戦争』という化け物に、知らない間に人間がふりまわされている」という小学校の先生の言葉がとても印象深い。
 お昌ちゃんの彼に赤紙がくる。そしてお昌ちゃん自身も家の借金の返済の為に女郎へ身売りされることになる。お昌ちゃんは彼に「戦争のない、争いのない所へ二人で逃げよう」・・と駆け落ちを決意するが・・・。
そして須藤少年達の「お昌ちゃん救出作戦」は・・・。
 この映画はお昌ちゃんの存在が、御仏や観音菩薩というような何か神仏に近い人間離れした象徴の感じがしてとてもインパクトに残った。
ラストで彼女が火に包まれるシーンでの彼女の強い眼差しは、無言の反戦を訴えているような悲しい鮮烈な感じがした。鷲尾いさ子を起用したのは大正解だったと思う。
 大林監督の映画は「あした」のように内容が盛り沢山で時にまとまっていないような感じも受けるけれど、この作品は役者さんひとりひとりが本当に上手く当てはまっていて、一貫して「反戦」のテーマを貫いているというのでは大林監督の作品の中でも優れた作品と言えると思う。原作は佐藤春夫の「わんぱく時代」。




野良犬
監督:黒澤明
出演:三船敏郎、志村喬
1949年 122分 日本映画 白黒 (CS)
★★★★
 この作品も面白かったです。真夏の暑い日、バスの中で拳銃をスリに盗まれた新任刑事とその後にその拳銃をもとに次々と起こる殺傷事件。。この新任刑事・村上にまだ若い三船敏郎がまだ板についていない駆け出しの新任刑事役として出ていて、良かった。自分の拳銃が盗まれた事に対する自責の念とその拳銃にまつわる不安な予感が次々と本当の事件としてなっていく、その神経のすりへるような狭間でエネルギッシュに犯人を追いつめていく執念と繊細さ。やっぱり三船敏郎は演技が上手いと思う。ベテラン刑事役の志村喬も相変わらずいい味を出していました。
 戦後まもない日本の状況、特に三船敏郎が拳銃をさがすべく闇市みたいなところに潜り込むその界隈といったら、今の日本では考えられないようなスペクタル。この描き方ってすごいと思う。日本ってこんなに奥の深い国だったかなーといつも思わず感心しまう。また暑い夏に盛り、クーラーのない時代の汗だくの感じが一昔前の感覚で妙に懐かしい。(笑)また、スリの女と村上が星空を見上げるシーン、ラストの花にチョウチョなど、映像に細かくこだわっているのがよくわかる。そして「悪い世の中だからといって悪いことをする奴はもっと悪い」という正面きった正義感はやはり黒澤監督だと思った。(06.03.13)