超私的映画感想日誌アーカイブス
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  数字



 計25本
 (○は邦画@はアニメ)
 おいしい生活
 桜桃の味
@王と鳥
 大いなる幻影
 狼の時刻
 大通りの店
おかあさん
お嬢お吉
 オテサーネク
 鬼が来た!
鬼婆
 鬼火
 おばあちゃんの家
オペレッタ狸御殿
オムレツ
@親指トムの奇妙な冒険
折鶴お千
 オリーブの林をぬけて
 オール・アバウト・マイ・マザー
ALWAYS〜3丁目の夕日〜
 愚かなる妻
婦系図
 女の都
 女と男のいる舗道
おんぼろフィルム

おいしい生活
監督:ウディ・アレン
出演:ウディ・アレン、トレイシー・ウルマン、ヒュー・グラント
2000年 アメリカ映画 95分 カラー
★★★
 12月の始め頃だったかな..BS2でやっていたので見たけど、あまりにもわかりやすすぎて面白くなかった。ウッディ・アレンの映画にしては凡作ということですが・・どうなのだろう?
 見せ掛けはクッキー屋を始めた夫婦が、どんどん意に反して繁昌していく..裏では、泥棒のおおがかりな計画があったんだけれども、やがてそんな計画も水の泡と化して、クッキー屋で大富豪までになる夫婦のお話。ところがそこから、夫婦の間がおかしくなっていく、妻は本当の教養や知識を求め、夫は全くそういったものに興味を示さないで、本来の泥棒である自分の本性をかえようとしない..そして結果は..っていうと、もう何故だかヒュー・グラントが出てくるあたりから、見え見えなのです。ヒュー・グラントってこういう役が多いのね..「ブリジッド・ジョーンズの日記」も然り。もっといい役が見てみたい。
 何もかも、ストーリーがピタッピタッとはまっていくところは、本当にエンターテイメントの王道だね。誰かがハリウッド映画はエンターテイメントでヨーロッパ映画はアートだ..と言っていましたが、この映画を見ると、それもうなずける。「ギター弾きの恋」も、やはりそうだった。ところがこの「ギター弾きの恋」のモチーフになったフェリーニの「道」はけしてエンターテイメントだけでは終わらない。まあ、そもそもアートってなんぞや?エンターテイメントのどこが悪い??っていう好みの問題はありますが・・それに、ウッディ・アレンの他の作品ももう少し見てみないと、断言はできないし。(04.12.26)





桜桃の味
Taste of Cherry
■監督:アッバス・キアロスタミ
■出演:ホマユン・エルシャディ、アブドルホセイン・バゲリ
1997年 イラン映画 98分 カラー
★★★★
◇死を決意した男が車で自分の自殺を手伝ってくれる人を探す。彼はひとりの熟年の男性にそれを頼むのだが、自分の車に乗せて、その男性の話しを聞くうちに、考えが次第に変わっていく。ほとんどが車に乗っているシーンだけれど、車がぐるぐるとカーブを何度も回るシーンが主人公の男の迷う心理状態とうまくマッチしている。




王と鳥
LE ROI ET LユOISEAU
監督:ポール・グリモー
原作:アンデルセン「羊飼い娘と煙突掃除人」
声出演:パスカル・マゾッティ、ジャン・マルタン
1980年 フランス映画 87分 アニメーション (渋谷アンジェリカ)
★★★★☆
 この夏、スタジオジブリの原点として高畑勲や宮崎駿らによって渋谷で劇場公開された「王と鳥」。ちょうどお盆に実家に帰っていた時に甥っ子や姪っ子、息子たちを連れて渋谷へ総出で観に行きました。一言感想は、ジブリは「原点」というだけあって、この作品以上のものをつくろうと頑張ったなー..ということ。
 この映画は監督のグリモーの意思に従わない形で当時のプロデューサーが完成させた「やぶにらみの暴君」(1952年)の改作で原作はアンデルセンの「羊飼い娘と煙突掃除人」なのだそうですが、実際の話は原作とは全然違うらしい。また「やぶにらみの暴君」のフィルムはグリモーが買い取り、今の「王と鳥」の形にしたそうだが、現存していないのか現在は観ることができない。しかし「やぶにらみの暴君」の方が評価が高いとされている曰く因縁あり..の作品なのです。
 お話はわがままで孤独な王様が肖像画家に自分の絵を描かせていている。肖像画家は王さまのやぶにらみの目をどう描こうか迷うが、そのまま目を寄せて描いてしまう。世間体の手前、その絵に満足したような王であったが、実はそのやぶにらみの目をした自分の絵が気に食わない。気に入らないものは全部、地下に切り捨てて排除してしまうのだ。そして画家は消され、王は自分の肖像画の目を描き直す。ひどいコンプレックスの持ち主である。
 王の自室には自分の肖像画の他に美しい羊飼いの少女の絵と煙突掃除人の少年の絵が並べてあった。王は羊飼いの少女に心を寄せていた。羊飼いの少女と煙突掃除人は秘かに愛し合っていた。ある夜、二人は絵の中からこっそり抜け出してしまう。それを観た肖像画の王もまた絵から飛び出てきて二人を追いかける。そこへ本物の王がやってくるが肖像画の王が本物の王を消してしまう。こうしてやぶにらみの本物の王はいなくなり、少女と少年は城から逃げ出し、それを追いかける肖像画の王、そして、王と敵対している鳥が少女と少年の道先案内人として逃避行の大冒険が始まるのである。。
 アニメーションの動きなどはディズニーと近いものがありましたね。すごく滑らかに動き今のジブリなどのアニメーションにはない動きです。でもアニメの人形に命が吹きこまれているような感じ。そして空中戦といってよいような活劇。けして空の飛行機というのではなく、高い建物のてっぺんから飛び降りてくるというような立体感のある舞台とスリルは「ルパン三世カリオストロの城」などにもそっくりそのまま使われている。そしてお城の地下にある貧民窟。ここの住人は太陽も知らなければ動物というものも知らないという設定。この天上と地階というつくりはフリッツ・ラングの「メトロポリス」を模倣しているのかすごく面白い。ラストは巨人によってすべて破壊されるのですが、後半よりもどういうわけか前半の方が面白かった。
 肖像画の王に消されたもとの「やぶにらみ」の王はその後、どうなったんだろう..「やぶにらみの暴君」では本物の王が復活するんじゃないか・・とか、まだまだ想像力の余地がありますね。
 縦社会に対する批判やフランスの革命精神など、メッセージ性はたくさんあります。恋人たちを逃がそうとする鳥の個性的なキャラクター、王の飼い犬のかわいらしさ、そしてバックに流れるジョセフ・コズマのオルゴールの旋律はもの悲しくこの作品全体を美しく包み上げているようでした。
 長男もこの作品が面白かったらしく、DVDが欲しいと言い出してAmazonでみてみたら、すでに在庫切れ。去年は店頭にもまだあったのに..。ボケボケしていたらあっという間になくなってました。キューン・・(TT)。 (06.08.26)




大いなる幻影
LA GRANDE ILLUSION
監督:ジャン・ルノワール
出演:ジャン・ギャバン、エリッヒ・ファン・シュトロハイム
1937年 フランス映画 117分 カラー (DVD)
★★★
 「映画史上最高の金字塔」なんてコピーがあったのだけれど、えー!これが本当に戦争なのかな??と思ってみてしまった。第一次世界大戦と第二次差界大戦ではこんなにも人間の本質そのものが違うものなのかな?はっきりいってしまえば、かなり「ぬるい」と思った。ルノワールっておぼっちゃまだ..とまで思ってしまった。(笑)今までみた戦争映画「戦場のピアノニスト」「夜と霧」「鬼が来た!」など、人間ってここまで残酷になれるものなのかな..と思ったものだった。でもこの作品は違う。シュトロンハイムが演じるドイツの貴族の将校と敵国フランスの大尉の友情、そしてジャン・ギャバンが演じるフランス人兵とドイツ人女性の恋愛..。「もし戦争がなかったら」「もし国境がなかったら」もっと人間として通じ合えたのに..という理想をふと描くこと..それが「大いなる幻想」であるという戦争批判の映画であるのは良く理解できるのですが、今までみた戦争映画があまりにも衝撃的なものだったので、こんなに人間的な戦争がちょっと信じられなかった。そんな自分もちょっと悲しいけど、、。でも戦争はやはり過酷で恐ろしいものだと思う。(06.08.10)




狼の時刻
VARGTIMMEN/HOUR OF THE WOLF
監督:イングマール・ベルイマン
出演:マックス・フォン・シドー、リヴ・ウルマン
1968年 スウエーデン映画 87分 白黒
★★★★★
 イングマール・ベルイマンDVD-boxが届いたので、さっそく中をあけて「狼の時刻」を観ました。「狼の時刻」って古代ローマの人が固く信じてた<深夜と暁の間の悪魔が解き放たれる>時間のことで日本の「丑三つ時」にあたるのだそうです。
 怖いシーンもある映画でしたが、奇想天外といってもいいような展開に最初の二百歳を越すという無気味な老婆が出てくる時からどきどきわくわくしながら観てしまいました。
 ストーリー・・・北海の小島に暮らす有名な画家ユーハンは穏やかな妻アルマと静かな日々を送っていたのだが、昔の愛人の面影を忘れられずに日々思い悩み精神的な苦しみを日記に綴っていく。そしてそれを前述の老婆の忠言で読んでしまうアルマ。
 やがて、小島に住む男爵から声をかけられ、晩餐に招かれたユーハン夫妻。その男爵の城の住民の異様な雰囲気がなんとも見物。なんとなく人間じゃないような...。お芝居に出てくる人形が指サイズの小さな小人だったりして、そのあたりも悪魔めいた雰囲気。そして、男爵はユーハンの元愛人を知っているという..そのあたりからユーハンの人格はどんどん崩壊していく。
 マックス・ファン・シドーが、どんどん人格が壊れて行く画家をクールでスマートにかっこいいくらい好演している。
 解説にはホラー映画だ..と言っていましたが、ホラー映画だとは思わずに観てました。確かに、怖いシーンもあったのですが、それも人間相手というより、悪魔相手の寓話、ハリウッドのホラー映画とは全然違っています。北欧のちょっと怖いお伽話を読んでいるような、空想力があるのです。映像も人間が逆さまに天井を歩いていくところなど、すごく面白かった。
 徹底したお芝居、エンターテイメントの作品だと思いますが、素晴らしかった。こういう悪夢と現実をいったりきたりするような映画は大好きです。もちろん、描き方にもよりますが、ベルイマンは最高です。
 噂のリブ・ウルマンを始めてみましたが、魅力的な女優さんでした。ちょっと思慮深い陰りのある優しい雰囲気の女優さん。彼女とベルイマンとは恋人同志で、この「狼の時刻」の時にはリブ・ウルマンはベルイマンの子供も身ごもっていたらしい。ベルイマンは「結婚しよう」と彼女に言ったが、彼女の方が断ってしまったようです。彼女はノルウエーの人で、ノルウエーを離れてスウエーデンに住む決心がなかったようです。でも、ベルイマンはせめて映画に出演してほしい..とこの「狼の時刻」の脚本も彼女用に「身重の妻」という設定で書き直したらしい・・・というエピソードが特典のインタビューに入っていました。
 なんとなくフェリーニも入っているような感じがしたのですがフェリーニの「81/2」はこれよりももっと前の年につくられているから、フェリーニってやっぱり恐るべし。
 あと、白黒の映像が本当にきれいで、カラー作品以上じゃないかと思ってしまいました。(04.09.21)




大通りの店
BCHOD NA KORZE
THE SHOP ON MAIN STREET
監督:ヤン・カダール、エルマール・クロス
出演:イダ・カミンスカ、ヨーゼフ・クロネル
1965年 チェコスロバキア映画 128分 白黒 (BS2)
★★★★
 日本未公開の映画だそうですが、今東京都写真美術館の「チェコ映画祭」で公開されるようです。この映画はアカデミー賞外国語賞など数々の賞を獲得した作品。
 出だしはコウノトリ(もしくはツル??)が煙突に巣をつくっていて、その下の大通りでは人々が行き交う・・・・とっても、平和でのんびりしたチェコの様子が伝わってくる。しかし、時は第二次世界大戦中1943年あたり。時代の波(ナチスドイツによる支配)がチェコにもどんどんつめよってファシストが有力な時代、主人公の中年男トーノはお人好しな性格でファシストにもなれず、ファシスト党員の義理の兄が手をまわしたユダヤ人の老婆の手芸店の管理人になり店を乗っ取ろうとしますが、老婆は耳が遠く、国が戦争をしているということさえわからない状況。自らの危ない立場を理解しようとしない。そんな老婆を路頭に放り出すわけにもいかず、トーノはユダヤ人を助けるグループの人たちと親しくなり、次第に何かと老婆を助けようとする・・・・が、とうとうナチスの親衛隊のユダヤ人狩りが始まる・・・
 ラストは、出だしの雰囲気からは考えられないほど、悲劇的な重たい内容。トーノのまるきり善人でもなく、むしろ気が弱くて卑怯な悪人である部分もしっかり描き出して何重にも人間のよじれやねじれを見せているのはいかにもチェコらしいブラックな部分だと思った。後半はとくに引き込まれました。
 ユダヤ人の老婆を演じていたイダ・カミンスキという女優さんはこの役でアカデミー賞主演女優賞を獲得。「ハウルの動く城」に出てくるヒロインのおばあちゃんに雰囲気もそっくり。でも本当に素晴らしく味のある演技でした。
 そして、ホワイトアウトするラストの終わり方は、チャコのファンタジーな部分と戦争の悲しみが合わさってとても良かったです。(05.09.07)




おかあさん
監督:成瀬巳喜男
出演:田中絹代、香川京子
1952年 日本映画 98分 白黒 (CS)
★★★★☆
 終戦間もない頃の日本。長男を失い、一家の大黒柱である夫も亡くして女手ひとつで残されたクリーニング店を切り盛りしながら残った長女(香川京子)と次女を育てていく「おかあさん」を田中絹代が穏やかに包み込むような優しさで演じている。
 長女である香川京子がナレーションをしながら話は進んでいきます。もう年頃の娘でありながら、まだ幼い子供のように母親を慕う姿は、本当にいい親子だなあと微笑ましい。
 長男が死んでしまった後も、すごい落胆も見せずに生きて行く一家の力、特にお母さんの淡々とした姿にびっくりした。また次女を里子に出すのも、貧乏だから仕方のないことであったのだが、そういったことで決して凹まないで当たり前のように生きて行くおかあさんはすごい。(もちろん、情が薄いとかそういうことではないのだが・・)。お母さんを助ける加藤大介の役も良かったです。
 それと香川京子とそのボーイフレンドの清い交際が感じがよかったですね。
 あとこの時代のセットの良さは成瀬監督はどの作品も素晴らしい。「愉しきかな人生」でもそうでしたが、この昭和初期のお店などの小物の感じが本当に細かく配慮されていて暖かくて堅苦しくなく、いい感じなのですよね。「ALWAYS夕日三丁目」が好きな人にもお薦めできます。私は通りに面したところに作業台のあるこのクリーニング店の雰囲気が現代では観た事がなく、本当に好きな感じでした(笑)。(06.06.05)




お嬢お吉
監督;高嶋達之助、溝口健二
出演:山田五十鈴、林敏夫
1935年 日本映画 64分 白黒 (CS/ch310)
★★★☆
 ぴあのシネマクラブ(2004-2005年度版)にもallcinemaにも載っていないこの作品、溝口健二は「指導」みたいな補助的(?)な感じで監督している。。だからなのか、わかりませんが、俳優陣があまりにも芝居じみた演技でもうひとつでした。
 もと名家のお嬢さんだった美しい娘が家の没落とともに兄の悪事を匿い、みずからも、やくざな家業の人間たちと関わりながらお金を工面して「お嬢お吉」として悪名たかい女になっていく。この時代(江戸時代)、新聞やテレビがあるわけでもないので「お嬢お吉」というのは噂だだけで、顔などあまり知られてはいないのをいいことに善良な人をだましていく手先になっていくのだが、ある日、偽装の見合いをした相手の男と恋に落ち、本当の人間らしさを取り戻す。
 この映画は舞台が江戸なので「べらんめえ」言葉でこれまた、すごい女です。山田五十鈴さんは内気な雰囲気の人だけれど、実に堂々としたキレのいい演技をする女優さんだ。この作品でも圧倒的に存在感が大きかった。相手役の男がもう、びっくりするぐらい、柔な男性で..今の時代にはいない上方の俳優さんともいうべきなんでしょうか(^^;;。にしても、山田五十鈴さん以外は、ちょっと素人っぽい演技が多くて、そこがもうひとつでしたが、なかなか面白かったです。(06.11.15)




オテサーネク
Otesanek
監督:ヤン・シュヴァンクマイエル
出演:ヴェロニカ・ジルコヴァー、ヤン・ハルトゥル、ヤロスラヴァ・クレチュメロヴァー
2000年 チェコ・イギリス映画 127分 カラー (レンタルDVD)
★★★☆
「アリス」「ファウスト」と観て、この「オテサーネク」では、ホラー映画という感じ。シュヴァンクマイエルの独特の作風には私自身はだいぶ新鮮味がなくなっていたけれど、でも、最後までどうなるのか...と目が離せなかった。
 もともとチェコ民話にもとづいているつくられている。子供のいない夫婦が偽装妊娠をしたりしているうちに、夫がとってきた赤ん坊の形をした切り株に命が宿り、特に妻の方は喜んで切り株の赤ちゃん(オテサーネク)を育てるのだが、この切り株は猫でも人間でもなんでも食べてしまうという怪物。郵便屋さんや、ボランティアのおばさん、住んでいたアパートの住人など次々と食べていってしまう...というもの。
 私はてっきり森の奥の農夫の家で起きる事件なのかな...と思っていたのですが、町中のアパートで起きるんですよね。なんともいえない場末的な雰囲気はいかにもシュヴァンクマウエルらしい。このオテサーネクに興味を持つアパートの住人の少女の存在がまた不気味。この子はまゆげまで金髪の9〜10歳くらいの女の子なのですが子供とは思えないエロティックな少女で、クジでオテサーネクのえさを決めるのに、自分の親まで選択肢にいれているような、なんとも不可解な少女、怖いのですよ。最近あった親に毒を持った高校生の少女の事件を思い出させた(^^;;
 そしてこのオテサーネクもおなかがすくとグズって声をあげて泣くのですが、この声がかわいい赤ん坊の声なのも、なにかぞっとする感じ。ぞぞぞーー..というまさにそういう映画でうすね。
 今までの作品よりも人形や粘土アートが出てこなくて実写がほとんどだったのがちょっと物足りなかった。でも奥さんのエヴァ・シュヴァッヴァンクマイエロバーが書いた絵本「オテサーネク」はシュヴァンクマオエルの絵よりとっつきやすく色彩も豊で絵本としてかなり面白いと思いました。




鬼が来た!
鬼子来了
監督:姜文 (チアン・ウェン)
出演: 姜文 (チアン・ウェン) 香川照之
2000年 中国映画 140分 モノクロ
★★★★☆
 2000年度のカンヌ映画祭グランプリ受賞作。すごい気迫の映画..。「鬼が来た!」っていうのは日本人のこと。だから日本人にとってはショックな映画であるが、素晴らしい作品。主演の姜文と香川照之の鬼気せまる迫真の演技が本当にすごかった。
 お話は第二次世界大戦の中国のある村。そこに一人の日本人と通訳の中国人が麻袋に入れられて、村民のチアン・ウェン(姜文)の家へ謎の人物が放り込んでいく。「殺せ!殺せ!」と日本語で叫ぶ日本兵・花屋の言葉を「殺さないで!殺さないで!」と訳する中国人の通訳。日本兵を捕らえている事を日本軍に知られたら、大変なことになる..と彼等を秘かに殺そうとするが、平凡で人のいい村民達にはそれが出来ない。少しずつ村民に打ち解け始めた花屋とチアン・ウェンは相談して、花屋を日本軍へ平和的な交換条件のもと返すことに決める...しかし、ここからが常識を逸脱したもう絶句の展開に..
 中国の村民達、長老や奇人・変人、すごく面白い顔ぶれで、まるでクストリッツアの「アンダーグラウンド」を思い起こすような、ものすごいパワーとバイタリティ。しかし前半は笑いの多い場面だが、後半からは凍り付いてしまうほどの残忍な展開..
けれど、日本人なら一度は見ておいても良いと思う。映画の面白さも含めて..。
 主演もつとめた監督の姜文は、素晴らしい役者さんだと思った。中国って、こういう本当にいい役者さんがいる。けれど今回の作品は日本への反省を促す意図も少なからずあったと思う。そして香川照之の中国での撮影は、十二指腸潰瘍になるほど、大変なものだったらしい。
 旧日本軍って、本当にひどい事をしてきたんだ。映像でまざまざとその理不尽さを見せつけられた。(04.07.01)




鬼婆
監督:新藤兼人
出演:乙羽信子 吉村実子 佐藤慶
1964年 日本映画 100分 白黒 (レンタルDVD)
★★★★
 あー、コワッ!っていう映画です。この映画は尾道にある映画資料館で、いつも目にとまる作品だったので、借りてみました。
 数年前まで「ガングロ」とか「ヤマンバ」とかっていうメークがありましたよね。今もまだそういうメークの女子高生を見かけますが、この映画の乙羽信子のメークは、まさにその「ガングロ」『ヤマンバ」と何一つ変わらないゾ〜(^^;;というので、すごいですねー、今に通用するファッションだったわけですね。(笑)
 戦国時代、芒ケ原という人の背丈ほどもある草原の中で中年の女とその息子の嫁が二人で暮らしている。この二人はこの芒ケ原へ迷い込んでくる落ち武者を殺しては、刀や鎧などの装飾品を売って生計を立てていた。そこへ息子の戦死の報を持った知り合いの若い男が戻ってくる。そしてこの二人の女性の近所に住み始めるのです。どうにも下品な男で二人の女のうちの嫁っこの方に目をつけて、さかんに誘う。当然のことのように嫁とこの若い男は男女関係になって夜な夜な、嫁は姑の目を盗んで男と逢い引きを重ねる・・・嫁が男の方へ出て行かれては生計が立たないと考える姑は、当の男に自分から誘いをかけるが、あっさり断られる・・やむなく姑はあの手この手でこの二人の間を割こうとする。
 とまあ、ストーリーを書くとものすごくエロティックな映画のようにも感じますが、どちらかというとホラーに近いかも。どういうわけかエロティシズムというのを思ったほど感じなかったのは乙羽信子の持つ雰囲気からかな。この人はこういう役でも本当は線の細い美しい容姿の人だと思いました。吉村実子はさすがにそうではありませんでしたが・・
 そして、この芒ケ原の草原の感じが「紅いコーリャン」のコーリャン畑を思わせました。なんという植物かわかりませんが人の背丈ほどもあるこの草原。草がきしりあう音とか、ものすごい効果音を出していましたね。そして、双方の映画に共通するのは、とても野性的、エネルギッシュな事、原始的な事。
 ラストの展開は、日本昔話などで聞いたことのあるような感じでしたが・・・やはりホラーですねえ。そこまでやりますかーと言う感じであまり好きな感じの作品ではないですが、ストーリー構成や演出など面白く、ゴツゴツした陶芸の焼き物を思わせるような地味だけれど優れた映画だと思います。(05.08.11)




鬼火
LE FEU FOLLET
THE FIRE WITHIN
監督:ルイ・マル
出演:モーリス・ロネ、ベルナール・ノエル
1977年 フランス映画 108分 白黒 (CS)
★★★☆
 なんともフランスっぽい(というかパリらしい)都会人のお洒落さと陰鬱な雰囲気の映画でした。30を過ぎれば人生が見えてくる??平凡は嫌だ・・・という鬱病の主人公。青春時代には大酒飲みで薬などもしていたのが中年の域に入って一挙にその疲れのようなものが見える。中年クライシスと観て良いのか??気遣ってくれる友人は多いし、慰めてくれる女友達も多いのにひたすらそれらに背を向けて自意識の殻の中に閉じこもろうとする・・。私にはちょっと理解しがたい部分もありましたが、芸術家とか本当に繊細な人物に多いのでしょう。でも日本も中年の自殺者の多い国ですが、若者は別としても、もっと生活苦とか働き過ぎとか社会責任とか..なんか理由が違うように思います。
 主役をしたモーリス・ロネの本当にひきつったような暗い表情は行き詰まった人間の心情がよく出ていたと思います。しかしなんといってもこの映画のもうひとつの主役はエリック・サティのピアノソロ。室内劇でこんな曲を流されるとテーマがテーマだけにどっぷり暗い気分になってしまいました。「ジムノベティ」というらしい。私も聞き覚えのある曲もありましたが、当分、この曲を聞くと、気分が鬱に沈みそうです。そんな曲ではないとは思うのですが・・・。




おばあちゃんの家
監督:イ・ジョンヒャン
出演:キム・ウルブン、ユ・スンホ
2002年 韓国映画 87分 カラー
★★★★★
 静岡の商店街のあちらこちらにこの映画のポスターが貼ってあったのだけれど、時間がとれなくて見に行けなかった。いい映画らしい..というのは聞いていたけれど、それほどでもないんじゃないかな〜..というのが、最初の直感でしたが、いい意味で外れた。またしても泣かされてしまいました(笑)
 今、流行りの韓国映画だけれど、恋愛ものじゃなくて、こういう映画もあるんだな〜..と。
 7〜8才くらいの腕白盛りの少年が、母に連れられて、山奥にあるおばあちゃんの家に一人預けられる。このおばあちゃん、映画を見るまでは、もう少し若い元気なおばあちゃんなのかな..と思ったら、そうじゃない。耳が聞こえなくて(遠い?)口がきけない。じっと黙っている大人し〜〜いおばあちゃん。腰が90度くらいまがってて、杖をついてようやく歩いている。本当に100才近いんじゃないか..って思うくらい年とったおばあちゃんなのでした。都会っこでわがままな少年サンウは、そんなおばあちゃんを「バカ」とか「マヌケな老人」とか、いいたい放題。それに、この山の暮らしが気に入らず、一日中ゲームに明け暮れて、はてはおばあちゃんに「ケンタッキーのチキンが食べたい..」とか困ったことばかりいう。「おばあちゃんなんか、死んじゃえ!」なんて言ってしまうのが「子供」なんだけれど、それにしても、このわがままぶり、横柄さはひどい。
 でも、おばあちゃんはいつも悲しそうな表情を浮かべたまま、じっとだまってされるがままになっている。決して、しかりつけたりしない。それに「ケンタッキーのチキンが食べたい」という孫の要求を満たす為に、大雨が降るなか、びしょぬれになって生きたままの鶏を買ってきて、それを茹でて塩をつけて食べさせようとする。「ケンタッキーのチキンじゃないよ!」とここでも少年は大暴れ!「こんなの食べないやい!」といいつつも、お腹の虫には勝てない。夜中にこっそり起きて、茹でたチキンをむさぼるように食べる。きっと、美味しかったに違い無い。
 そんな感じでサンウは、ずっとおばあちゃんにわがままばかり言い続けるんだけれど、時に自分の横柄さがたたって、天罰を食らうこともある..このあたりは、なかなか面白い。少年は痛い目に合ながら、何かを少しづつ学んでいくようだ。
 やがてお母さんが迎えに来て、おばあちゃんと別れる日が来る。その頃には、もう少年はおばあちゃんに対する気持ちが変わっている。。おばあちゃんの身体のことが心配でたまらない。字が書けないおばあちゃんに一生懸命「会いたい」や「身体が痛い」という字を教えるのだった。
 少年役の男の子もほとんど素人さんらしいけれど、このおばあちゃんも、映画も見たこともない..という、本当に素人さんらしい。あと村びともみんな素人さん。
 おばあちゃんは、とっても小さい人なんだけれど、でも本当に大きな手をしているんです。身体に合わないような..。おばあちゃんのゆっくりした動作ひとつひとつに、その大きな手が印象的で、たくさんたくさん働いてきた、手なんだな〜と、何かとても大きなぬくもりを感じることができる映画でした。
 この監督さん、女性らしい。なんとなく、日本の河瀬直美を思い出しました。(04.05.13)




オペレッタ狸御殿
監督:鈴木清順
出演:チャン・ツイイー、オダギリ・ジョー、薬師丸ひろ子
2005年 日本映画 114分 カラー (MOVIX清水)
★★★★☆
 鈴木清順の映画がどうしてもスクリーンで見たくて、清水まで行ってみてきました。監督デビュー50周年、82歳。それにしてもなんてハイカラな感覚。いつもの鈴木節で、大変面白かったです。
 オペレッタとは*・・・は下記を参考までに。チャン・ツイイーが演じるのは狸御殿に住む、タヌキ姫。しかも日本語はほとんど話さず、中国語で話す唐の国からきた異国の姫・・という設定。そしてオダギリ・ジョーは男版「白雪姫」。その美少年ぶりから、美しさが一番でないと我慢ならない父親の怒りを買い、一度迷ったら死ぬまで出られないという山に捨てられる。そこで出会ったのがチャン・ツイイー扮する狸姫。二人は恋に落ちる。ところが「狸と人は恋に落ちてはなりませぬ・・・」と、二人の行く末を案じる狸姫の乳母はさまざまな妨害を企てる・・・さらには父親の追手が・・・。
 不思議な映像美や衣装、舞台、絵との合成、デジタルまででてきて、ポンポンと場面が次々展開していく。音楽も、ロックやタップなどさまざまあって良かったです。
 なにはともあれ、チャン・ツイイーは「さすが」の人でした。もともと舞踏では将来を約束されていた人らしいのですが、踊りがうまいのはもちろんのこと、表情がのびやかで自然、イキイキしていてひときわ輝いていました。それに比べ、オダギリ・ジョーをはじめ日本の俳優さんはちょっと緊張しまくりというか・・どの人も演技が固く感じられてしまった。チャン・ツイイー、さすがに世界の舞台を踏んでいるだけあります。またアクションなどもしているせいか、身のこなしがひときわ軽い。素晴らしかったです。「LOVERS」もみてみないといけません。
 あと、美空ひばりがデジタル合成で出てくるのですが、ちょっと、あまりにもリアルというか、幽霊を見たような心境になりました(^^;.役柄的にはそれでぴったりなのですけれど..
というわけで、この春の新作、お薦めの1本です。(05.05.31)




オムレツ
監督:岩井俊二
出演:高田純次、山崎裕太
1992年 日本映画 24分 カラー (CS)
★★★☆
 この作品くらいになると、なんとなく、今の岩井作品に繋がっていくような感じ。「打ち上げ花火〜」に出演している山崎裕太がでてくるからかな。
 離婚した両親のそれぞれの親の方についた姉弟がお互いに「ヤマダくん」「ナカガワさん」とお互いの名字を呼びながら、親の状況を報告するという内容。その中に「オムレツ事件」があったわけです。
 またまた高田純次が情けない父親役として面白い役を演じている。加えて一緒に暮らしている息子役の山崎裕太の、「打ち上げ花火〜」の時を思わせる大人ぶった?しっかりものの息子が対比して絶妙。少しサローヤンの「パパ、ユーアー、クレイジー」「ママ、アイラブユー」に似た感じの面白い作品です。(O5.08.05)




親指トムの奇妙な冒険
The Secret Adventures of Tom Thumb
監督:デイヴ・ボースウィック
出演:ニック・アプトン、デボラー・コラード
1995年 イギリス 60分 カラー 実写&パペットアニメ(DVD)
★★★☆
 実写とストップモーション・アニメによるブラック・ファンタジー。遺伝子操作によって生まれたミクロの赤ん坊トムは、ある日、何者かにさらわれる。あやうく実験材料になるそうなところを逃げ出し、トムは同じ小人たちに救われる。・・・・人形よりも、実写の人間の方が、はるかにグロテスクだった。ミクロの人形から見ると人間は巨人であるし、怪物的な要素をもって映し出される。人間もストップモーションで撮影しているので、動きもかなり不自然でドアップだから、気味悪い。生身だからなおさら。加えてトムもキモかわいいというキャラクター。赤ん坊にも見えるし、年取ったおじいちゃんにも見える。人形の動きとかも、結構荒い・・。
 途中からトムを助けるミクロの戦士の人形が、ハリソン・フォードに似ていて、アドベンチャー的な雰囲気。でも、残念ながらトム以外の人形は、普通の人形劇となんの変わりもなくてちょっと物足りなかった。
 しかし、ダーク・シティの設定や、街の風景などは、さすがにハリー・ポッターの国、イギリス。とても凝っていて素晴らしく良かったです。(05.08.27)




折鶴お千
監督:溝口健二
出演:山田五十鈴、夏川大二郎
説明:澤登翠
1935年 日本映画 96分 白黒サイレント (CS)
★★★★★
 最初の方、私のミスで5分くらい録画が飛んでました(汗)。見終わった時は「滝の白糸」の方が良いかなーと思っていたのですが、やっぱり「折鶴お千」の方がどんどん余韻が大きくなってきて素晴らしい作品。原作は泉鏡花の「売色鴨南蛮」。
 話のパターンは「滝の白糸」にも似ているが、「滝の白糸」は男女関係にあったけれど「折鶴お千」のお千と宗吉は本当に姉と弟のような関係。最初の方の出会いがちょっとよくわからなかったのですが、立派な身なりの紳士が昔を回想するところから始まる。・・・回想は神田明神で少年が自殺しようとしているところへ、足抜きして逃げてきた美しい娘が見つけて止める。その少年は田舎から出て来て生活に失望したかの紳士・宗吉の若き日の姿である。お千の方は悪い連中に無理矢理妾にされ、女郎屋に高値で売られては、足抜きをして元へ戻るということを強いられている。お千は死のうとしている宗吉を一緒に連れていく。しかし、そこではさらに悪い生活が待っていた。宗吉は犬のように扱われ、お千は様々な悪事の手先として無理矢理詐欺まがいなことを強いられる。お千と宗吉はそんな中でも肩寄せ合って生きていくが・・・。
 山田五十鈴さんはこの時、まだ10代だったそうですが、なんとも言えない初々しさと大人っぽさが混ざり合って天女のように美しい。なんという髪の結い方なのかわからないのだけれど、普通の時代劇ではなかなか観られない結い方がなんとも色っぽく美しかった。
 結局、「滝の白糸」と同じく、男が女に養ってもらうという筋書きになっていくのですが、そのなんともいえない不安定感と弱々しさ、お千が折鶴をふっと口にくわえて吐き出すという繊細な演出、もう、ほれぼれするくらい美しいのです。溝口作品はリアリティがあると言われているそうだけれど、こんなに幻想的な美しさもまたないのじゃないかと思うほどです。ラストの展開は「滝の白糸」よりもシビアで、たしかにリアルではありますが、この終わり方もまた良かった。こういう純和風な映画が日本にあるというのが日本人として嬉しいですね。新藤監督の溝口健二を描いた「ある映画監督の生涯」も観たので、感想は後日書きたいです。(06.02.05)




オリーブの林をぬけて
Zire darakhatan zeyton
■監督:アッバス・キアロスタミ
■出演:ホセイン・レザイ、モハマッド・アリ・ケシャバーズ
1994年 イラン映画 103分 カラー
★★★★★
◇地震の災害に見回れた村で映画をつくるお話でスタッフや監督、役者さんを撮っている。地震の翌日に結婚式をあげた新郎と新婦を演じる二人の若い男女の撮影外での恋の駆け引きを、実際のことをヒントにキアロスタミが撮ったらしく、とても純朴で暖かい作品。撮影現場のセットシーンやラストシーンは上質。
<ネタバレあり> 前作の「友達のうちはどこ?」「そして人生は続く」の三部作の最後の作品で話しが三つとも繋がっているそうなのだけれど、実は私はキアロスタミの作品は「桜桃の味」しか見たことがないので、その辺りの流れがよくわからないのが残念。
 地震の災害に見回れた村で映画をつくるお話でスタッフや監督、役者さんを撮っているけれど、もちろん監督も本物ではなくて役者さんだが特にストーリーもない。
 地震の翌日に結婚式をあげた新郎と新婦を演じる二人の若い男女の撮影外での恋の駆け引きを、実際のことをヒントにキアロスタミが撮った作品らしい。俳優も素人を使っているそうだ。映画つくりのお話なので何度もNGのシーンが出てくる。結構、気の長い作品だ。撮影後、熱心に女性にプロポーズをする青年。青年の求愛に一切答えようとしない無言の娘に彼は一生懸命話し掛ける。「君は僕のことが好きな筈だ」「あの目はなんだったの?」・・・とにかくその求愛がストレートで純粋でかわいいとしかいいようがないくらい。「字を書けない者と字を書ける者が結婚してちょうどいいんだ。」「家のあるものと家のないものが結婚すれば貧富の差もなくなる」など、青年の単純だけれど純朴な考え方も何か認めてあげたくなってしまうような素直さがある。
 ラストシーンでオリーブの林を抜けてどこまでもどこまでも若者が女の子を追い掛けていくシーンは一枚の絵画のように素晴らしくきれいです。(2003.3.11)




オール・アバウト・マイ・マザー
TODO SOBRE MI MADRE
監督:ペドロ・アルモドバル
出演:セシリア・ロス、マリサ・パレデス、ペネロペ・クルス
1998年 スペイン映画 101分 カラー(レンタルDVD)
★★★★
 スペイン的なダイナミズムにあふれる映画。ペドロ・アルモドバル監督の映画は去年「トーク・トウ・ハー」を観たのですが、ストーリーがハリウッド映画並みに波乱万丈で面白いけれど、どこか肉肉しいのが、ちょっとグロテスクな感じ..(^_^;;
 最愛の一人息子を17才で事故で失ったシングルマザーのマヌエラは、息子にずっと隠していた父親に会いにバルセロナへと旅たつ。そこで彼女は旧友のおかまちゃんと出逢い、ボランティア活動をしているシスター・ロサに紹介され、さまざまな因縁的な出来事を通じて息子の死を降り越えて新しい「生」を育てていく..というお話。
 「トーク・トウ・ハー」もそうだったのですが、アルモドバゼルの映画は「生と死」や輪廻のような宗教的な感覚が強く、そこに演劇(ここでは「欲望という名の電車」)が深く関わっているところがすごく幻想的な雰囲気を持つのです。そしてスペイン独特の音楽が素晴らしい。
 出演者のほとんどが男も女もおっぱいを持っっている..一番自然なのが主人公のマヌエラとペネロペ・クルスが演じるシスター・ロサ。自然な美しさがありました。それ以外の人はどこか逸脱しちゃっているのですが、けれど、旧友のおかまちゃんにしても、最初は変な感じがストーリーが進むに連れ、誰よりも好人物に見えてくる..。いい味を出していました。
 しかし「トーク・トウ・ハー」でも、この映画でも、「奇蹟」とか「生まれ変わり」のような偶然性があまりにもつくられている感じが私はもうひとつ入り込めなくて、最初にマヌエラが息子を失う場面も「ここからが物語の始まり」という感じがして、どこか感情移入にいたりませんでした。そういう意味では演劇的要素が強い映画でストーリー構成の素晴らしさを楽しむ作品かもしれません。(05.02.19)




ALWAYS〜3丁目の夕日〜
監督:山崎貴
出演:吉岡秀隆、堤真一、小雪、薬師丸ひろ子
2005年 日本映画 133分 カラー (MOVIX清水)
★★★★
 うん、いい映画です。家族が「見たい!」というので一緒に見に行きました。昭和33年、東京タワーが出来上がりつつある東京の下町での心が暖まる人情の話。子供、大人に関係なく、家族や近隣の人たちの絆などを描いています。吉岡秀隆がやはり熱演でしたね。これほど存在感のある役は今までになかったんじゃないかな。あと舞台セットが見事に昭和33年を再現されていて、これは素晴らしいです。半端じゃないものすごい凝り方です。さすが日本という感じがしました。(笑)
 ただ前の日に「自転車泥棒」を見ちゃったのでーー、やっぱりちょっと幼稚というか、ラストはここまで盛り上げようとしなくてもいいのになーというのはありましたけれど、でも完全なエンターテイメントとして見れば文句のない映画です。映画館から出てくる人みんあ老若男女問わず「良かったねー」と口々に言っていたのが印象的でした。




愚かなる妻
Foolish Wives
監督:エリッヒ・フォン・シュトロハイム
出演:エリッヒ・フォン・シュトロハイム、ルドルフ・クリスチャンズ、デュ・ポン
1921年 アメリカ映画 108分 白黒サイレント (レンタルDVD)
★★★★☆
 やはりシュトロハイムは面白いです。「グリード」もそうでしたが、この映画も最後まで目が離せませんでした。モナコが舞台ですが、全部セットでつくった為、莫大な制作費だったらしい。あらすじはモナコに一山あてようとやってきたロシア公爵とその従姉妹たち。実はエセ公爵の一行だった。偽札で博打をしたり、モナコに来ている上流階級の金をまきあげようと若妻などを誘惑しようとする。まあ、とにかく、露骨にいやらしい男なんですよ、これが。(笑)この役をシュトロハイムが演じているのですが、つるーんとした細面の上品な顔にも関わらず、なんともいやらしい。(笑)そして博打で全財産をすってしまった偽公爵は、今度は以前から関係のあった自分の女中の金をまんまとだまして巻き上げる。だまされたと気がついた女中はついに大惨事へ・・・・。この女中が、はまりすぎるほどはまり役でなんともリアルすぎるほどでしたね。
 シュトロハイムはウイーンで生まれた人で淀川さん曰く、どこからともなくやってきた...という解説でしたが、本によると彼は貴族の子孫という噂はデッチ上げで、それでも大変裕福な商人の息子だったらしい。貴族並みの裕福な暮らしをしていたが、弟が人殺しをしてしまう。スキャンダルをおそれた父親が多額の賠償金を払って、表沙汰にしないようにした。そして工場の経営はすっかり傾いてしまう。そして、その頃にシュトランハイムは一人でアメリカへと渡った。無一文だったらしい。当時映画産業がさかんだったアメリカで彼はスタントマンとして日給3ドルで雇われたのが映画界への入り口となった。その後「国民の創生」や「イントレランス」にも出演、助監督などを得てついには監督もやったが、莫大な資金を使うので二度とカメラをもたせてもらえなくなったらしい。その後、俳優としても随分活躍している。シュトランハイムの作品はどこか毒毒しい個性があり、どこかヨーロッパ的。小物の使い方などもそんな感じがしました。リアリティもあってアメリカを代表する監督というのにも納得の作品です。(05.12.04)




婦系図
監督:三隅研次
出演:市川雷蔵、万里昌代、船越英二
1962年 日本映画 94分 カラー (BS2)
★★★★
 「切れろ、別れろ、とは芸者の言葉。私にゃ、いっそ死ねとおっしゃってください」っていう台詞、この作品のお蔦の台詞からきていたんですね。原作は泉鏡花。「婦系図」とかいて「おんなけいず」と読むらしい。泉鏡花とかいて「いずみきょうか」と読むらしい。女性かと思っていたら男性作家。この作品は自らをモデルとしたらしく、お蔦は彼の妻、主悦は自分自身、先生は師である尾崎紅葉なのだそうです。
 愛し合った男女の悲恋。恋というより夫婦愛..といった方が良いかな。身分違いの結婚と師に対する義理とで愛する女性と別れなければいけなかった男の復讐。
 復讐劇というより、とにかく、この「お蔦主悦」の二人が悲しくも美しいではないですかー。恋人よりももっと深い夫婦愛の「絆」を見ましたね。「湯島の白梅」のシーンでは泣かされました(^^;。
 お蔦役には実は若尾文子が決まっていて着物合わせまでしていたそうですが、急遽万里昌代にかわったそうです。でも、作品をみると、お蔦役には若尾文子より彼女の方がよくあっていたような気がする。市川雷蔵は、いつもながらに良かったです。それにしても、市川雷蔵って、どの女性ともぴったりで最高のカップルに見えてしまう・・・不思議な魅力の人ですね。(05.07.30)




女の都
La Citta delle Donne
監督:フェデリコ・フェリーニ
出演:マルチェロ・マストロヤンニ、アンナ・プルクナル
1980年 フランス・イタリア映画 139分 カラー (レンタルビデオ)
★★★★★
 面白かったです!!「秘宝館版不思議の国のアリス」..というべきか..。「フェリーニの道化師」みたいにローマかどこかの街を女性に焦点をあてて撮ったドキュメンタリー映画かな..と勝手に思っていたので、この展開の面白さ、すごさには脱帽。
 中年男性のスナポラツ(マルチェロ・マストロヤンニ)は列車の中で向かいの席に座った魅惑的な女性に目の誘惑を受け、そのままその女性と関係を持とうとトイレに行くが、ふいに女性は下車、彼も引かれるように列車を降りて、女性の後を追っていく。どんどん先を歩いていく女...まさに、白うさぎを追って穴の中に入っていくアリスのようである..そして、彼は、国際的な女性大会を開催している屋敷の中に入っていくが、中は女性、女性、女性..女性ばかり。その中にあの列車の女も見かけた彼は、「ジャーナリスト」と偽って、その大会に潜り込むが、しかしその大会は「男なんかいらない」という男の罪を追求しようとするウーマン・リブの大会でもあった。そして、彼は、そこにいる全ての女性から激しく攻撃される的となる..逃げようとするスナポラツ・・・  とまあ、あらすじを全部書き出すと長くなるので省略。とにかく、夢の中に入り込んだような不思議な物語の展開は実に、実に上手い!!スナポラツを犯そうとしたおばちゃんの母親である老婆が突如出て来て、娘を追い出す場面とか、麻薬中毒の少女達との危険で怪しいドライブ、巨根博士の秘宝館のような屋敷..途中ベッドの下にある穴をから、遊園地のようなイリュージョンの中をくぐり抜けて過去の女性遍歴を思い出すところ..などなど。
 ウーマン・リブの思想・・とか、この映画をどう解釈をするか..というより、ただ、もう面白い、こういう「夢の中の出来事」を実際に映画にしてしまったような映画は大好きです!けど、こういう「夢」を観るからには、男性ってウーマン・リブに恐怖心があるんだろうな〜〜と思ってしまいました。「スナポラツ」とはマストロヤンニがフェリーニから呼ばれていた愛称らしい。スナポラツの「よいしょ、こらしょ」というかけ声とも、オチャメで良かったです。 (05.03.21)




女と男のいる舗道
Vivre Sa Vie
監督:ジャン・リュック・ゴダール
出演:アンナ・カリーナ、サディ・ルポット
1962年 フランス映画 83分 白黒 (レンタルDVD)
★★★★
 今までみたゴダール作品の中では「勝手にしやがれ」と同じくらいわかりやすく面白かった。やはりアンナ・カリーナが実に魅力的。アンナ・カリーナはナナという名前で出てきますが、ゾラの小説「ナナ」と同じ名前であるけれど、ゾラのナナが娼婦から大女優になるのに対して、この作品のナナは女優を目指すが娼婦から身を持つ崩したまま這い上がれないで終わる。先日「居酒屋」をみたばかりなので、ちょっとしたシンクロでした。
 12編の話にわかれて分断されているけれど、わかりやすかった。特にカフェのシーンとかは何回も出てきましたが、先日みた「コーヒー&シガレッツ」より雰囲気が良かった。(というか単に私の好みで)。また、娼婦に身を持ち崩す作品でありながら、全般に渡って、なんとも清楚な空気感。これってアンナ・カリーナの天性が持っている雰囲気なんだろうなあ。特に「けなして怒ったら娼婦だ、笑えば貴婦人だ」というシーンでアンナ・カリーナがきゃはは!と笑うところ・・・心憎い演出です。(笑)・・とはいえ、とても無味乾燥というか悪く言えばちょっとしけたところもある作品だと思う。例えば、一般の人の日常をなんの演出もいれずにただカメラを回したら、こんな感じになるだろうな・・と。でもこの作品にはアンナ・カリーナだから華があった。そういえばアンナ・カリーナとゴダールが別れたあとにつくられた映画「彼女について私が知っている二三の事柄」も娼婦の映画だったが実にしけた映画だった。
 最初の方で悲劇的な運命を持つ女性である「裁かるるジャンヌ」をみてアンナ・カリーナが涙するシーンは、いろいろなところで聞いていましたが、これほどにアップで映しているとは..。でも、その顔が魅力的。そしてこの作品の結末を思うとなんとも哀れに思えてくるシーンでした。
 ゴダールとアンナ・カリーナコンビの作品はもっと観てみたいです。




おんぼろフィルム
監督:手塚治虫
1985年 日本映画 7分 アニメーション (CS/ch260)
★★☆
 作ったのは80年代だからカラーフィルムもある時代なのですが、あえて、映画初期時代の古いモノクロ無声映画のような画像にゴミのあるフィルムの西部劇をアニメーションでつくる。劇中のカーボーイが好きな女性と夢見る部分だけが一瞬カラーに。まあまあ面白かった。