超私的映画感想日誌アーカイブス
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  数字



 計20本
 (○は邦画@はアニメ)
 ヴァージン・スーサイズ
 ヴァリエテ
 ヴァンパイア
 ヴィゴ
 ウイスキー
 ウィンダミア夫人の扇
 ウエルカム・トウ・サラエボ

WATER BOYS
 
浮き雲
浮雲
雨月物語

 動くな、死ね、蘇れ!
 歌うつぐみがおりました
○打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

美しい夏キリシマ
生まれてはみたけれど

海が聞こえる
 海を飛ぶ夢
埋もれ木
 
運動靴と赤い金魚

ヴァージン・スーサイズ

The Virgin Suicides
■監督:ソフィア・コッポラ
■出演:ジェームズ・ウッズ 
1999年 アメリカ映画 98分 カラー
★★★
◇年頃の女の子は危険極まりない。巨匠フランシス・コッポラの娘の初監督作品



ヴァリエテ
Variety
監督:E・A・デュポン
出演:エミール・ヤニングス、リア・ド・プティ
1925年 ドイツ映画 57分 白黒 サイレント (レンタルDVD)
★★★★
 ええー!これがあの「最後の人」と同じヤニングス??「最後の人」ではどう見ても70歳くらいのおじいさんに見えましたが、この作品では、どうみてもドラエモンに出てくるジャイアンのようだ(笑)。それぐらい一気に若返ってあの巨体で空中ブランコなどやるからびっくりでした。
 このフィルムはアメリカ版らしく前半が大幅にカットされているようで、後半のきわめてシンプルなストーリーだけになっている。空中ブランコ乗りの夫婦がいて、夫(エミール.ヤニングス)は妻(リア・ド・プティ)にべた惚れという感じで仲良く曲芸をやっていたのですが、ある日、兄弟で空中ブランコをしていた有名な若い曲芸師が兄がブランコから落ちてしまったため、この夫婦に自分と三人でコンビを組まないか...と言ってきます。夫婦は快く引き受けて、三人で空中ブランコを披露し大当たりに。しかし、妻の方は、妙に色っぽい人で、また、若い曲芸師はかなりの色男。この曲芸師はうまく妻を誘い出し、二人は密通し始めます。最初は全く気がついていなかった夫もやがて周囲の噂などでついに二人の関係を知る事に...。打ちのめされた彼が出た行動は・・・・。
 妻の不貞に気づいた後、三人でやる空中ブランコは怖かったですねー。ヤニングスが演じる夫は、若い曲芸師をブランコから落とすことも頭の中では考えてみますが、それは出来ません。空中ブランコに乗っている時の目の周るような映像は不安定な心理状態も映し出してものすごい緊迫感。そして舞台が終わった時に、ヤニングスがポロリとこぼす涙。その後の惨劇・・・と続き、ヤニングスの思い詰めたにらみつけた顔のものすごい形相。まあ、とにかく、この映画はヤニングスの名演と、空中ブランコの万華鏡のようなきらびやかさがすごかったです。
 ヴァリエテというのは「バラエティ」の語源とかで日本では副題に「曲芸団」とついていたらしい。また妻を演じたリア・ド・プティはどこかで観たことがあるなーと思っていたら「燃ゆる大地」にも出ていた女優さんでした。
 もともとのお話はヤニングスがこのジプシー女であったリア・ド・プティに惚れ込み古女房を捨てて、一緒になる・・・というところから始まっているらしいのですが、このアメリカ版では完全にカットでした。ラストもかなり救いがあるラストといって良いかもしれません。それにしてもヤニングスってこういう野暮ったい男を演じるといい味がでるのですが寂しく終わる役が多いですね。(05.10.14)




ヴァンパイア
VAMPYR
THE STRANGE ADVENTURE OF DAVID GRAY
監督:カール・テオドール・ドライエル
出演:ジュリアン・ウエスト、モーリス・シュッツ
1932年 フランス・ドイツ作品(アメリカバージョン) 71分 白黒 (DVD)
★★★★★
 「裁かるるジャンヌ」の監督、カール・ドライエルの作品。「ジャンヌ」の次に撮った作品で邦題は「吸血鬼」。このDVDは店頭にあったのを買おうかどうか迷っていたのですが、もっと早く買っても良かったな。画質は例によってあまり良くはないのですが、「最後の人」の国内盤に比べるとまだ良いほうだと思う。
 それにしても、本当に怖い。「吸血鬼映画」って実は、ホラーの娯楽映画というより、どれほど美しく怖さを見せるかというところのみにテーマをおいているのではないかと思った。ムルナウの「ノスフェラトウ」は詩情豊かで、さほど「怖い」までいかなかったのですが、この映画は人がいないのに影が動く、影が踊る、草むらに子供の影みたいなのが遊んでる・・・どことなく日本の幽霊映画に近いリアルな恐ろしさがありました。鍬の影、また車輪の影..美しいのです。こういう凍るような美しさって北欧の感覚でしょうか。ベルイマンにもこういった雰囲気があるように思いました。 
 そして登場人物がどの人も小声でボソボソっとしゃべる...まるで夢遊病者の集まりというか、悪夢の中の出来事、呪われているような雰囲気なのです。このモアモア〜〜とした感じ、実に良かったです。トーキーの映画ですが、ほぼサイレントといってもいいかもしれません。
 また下から映した風景..いわゆる寝ている人(しかも棺桶の中から)観た動く風景とか、カメラワークもすごいものがあります。この作品は単なる吸血鬼映画と侮ることなかれ。実に個性的な映画です。もっとドライエルの作品がみたい!切望。




ヴィゴ
VIGO
監督:ジュリアン・テンプル
出演:ジャイムズ・フレイン、ロマーヌ・ポーランジェ
1998年 イギリス・フランス映画 114分 カラー (レンタルビデオ)
★★★
 先日みたヴィゴの「アタラント号」「新学期操行ゼロ」はしみじみ良かった。私はフランス映画って最近、見れば見るほど、どうもしっくりこない作品が多かったんだけれど、「アタラント号」と「新学期操行ゼロ」は本当に愛すべき作品だと思った。淀川さんも書いておられるように「ジャン・ヴィゴ・タッチ」というのが確かにある。言葉では言い表せないけれど、いたずら好きで反抗的で自由な何かが・・。
 で、この映画はそのヴィゴの短い一生を特に映画を撮り始めた時期から描いた作品です。ヴィゴの父親は著名なアナキストだったらしく、囚人として監獄で自殺しているんですね。映画では殺された..ともなっています。そしてヴィゴはそんな父親を愛し、父親の性を名乗った為に、映画監督としては世間から冷たくあしらわれる。「アタランタ号」も「操行ゼロ」も検閲にひかっかて上映できない・・・と、まあ、ヴィゴの生い立ちや晩年の苦労の日々が知る事はできたのは良かったけれど、この映画も先日みた「モディリアニ〜真実の愛〜」とたいして違わない感じの作品で、やたらベタベタとした夫婦愛に焦点をあてた作品です。しかも、ヴィゴとヴィゴの妻リジュの二人がアナキスト的性格に描かれているせいか、やたら気が短い、エキセントリック・・何か映画全体が落ち着きない感じで終わってしまいました。でも真実を曲げない(多分?)だけ「モディリアニ」よりは良かったと思います。この監督さんもヴィゴを撮るのだったら、自分もヴィゴから何か学んで伝記映画作家だけに終わってほしくないです。




ウイスキー
WHISKY
監督:フアン・パブロ・レベージャ、パブロ・ストール
出演:アンドレス・パソス、ミレージャ・パスクアル、ホルヘ・ボラーニ
2004年 ウルグアイ=アルゼンチン=ドイツ=スペイン映画 94分 カラー (静岡サールナートホール)
★★★★
 アキ・カウリスマキに似ていると専らの評判でしたが、ほんとに似てる。多分、随分と影響を受けているんじゃないかなあ。30歳の二人の監督でつくられた作品。でもアキ・カウリスマキの映画の方が、男女の絆というか恋愛観が濃いような・・・
 ウルグアイの小さな靴下工場の工場主で独身男性のハコボと彼の片腕として働いている中年の女性マルタ。ある日、ハコボの弟がやってくることになり、ハコボはマルタに偽装夫婦になってくれるよう頼む・・・・マルタはその申し入れをすんなりと受け入れて偽装結婚生活の準備を始める二人。そこへ、弟がやってくる・・・
 兄のハコボはとっても無口でマルタとほとんど必要な事以外、口を聞かない。対する弟のエルマンは営業マンタイプというか、陽気でマルタとどんどん親しくなんでも話す仲になっていく・・・そして3人はちょっとした旅行に行くことに・・・
 ラストが突然終わった感じで、ちょっとびっくり。特にハコボとマルタの関係に何か変化があったわけでもなく、二人は日常に戻る感じが味気ないけれど、最初、全く普通のちょっと固いイメージの中年女性だったマルタが、この偽装結婚により、少し女っぽく美しくなり、弟エルマンと親しくなるにつれ、実に楽しそうに笑う女性へと微妙に変化していく。その経過がなんとも心地よい映画だった。弟エルマンと別れる時にマルタが手紙を「飛行機の中で読んでね」と渡すのだけれど、一体何が書いてあるのるのだろう??これは観客の想像にまかせるようにつくられてあって、そこから先の展開は映画ではつくられていないのです。
 オジサンとオバサンの映画なので、現実的で味気なく、若い人のように一挙に燃え上がる恋愛のようにいかないところに旨味とユーモアがあってなかなか良かったです。(05.09.16)




ウィンダミア夫人の扇
LADY WINDERMEREユS FAN
監督:エルンスト・ルビッチ
出演:メイ・マカヴォイ、バート・ライテル
1925年 アメリカ映画 72分 白黒サイレント (レンタルDVD)
★★★★
 この作品は良かったです!原作はオスカー・ワイルドの戯曲「ウィンダミア卿夫人の扇」でオスカー・ワイルドって聞いたことあるなあと思っていたら、「幸福の王子」という童話の作者。なるほど、どことなく「自己犠牲」的なニュアンスがある話なのでした。
 イギリスの上流階級の人々の世界を描いた作品なのですが、ウィンダミア卿夫人はまだ若い妻で、実は死んだとされる母がいる。その母というのは、アーリン夫人という社交界でも恋多き女として知られていたが、自分の娘であるウィンダミア卿夫人に母とは名乗れないので遠巻きに自分の娘を観ている。ウィンダミア卿は自分の妻の母であるアーリン夫人に妻には内緒でお金の工面をしたりしているうちに、それは妻の知るところとなり、二人の関係をすっかり妻に誤解されてしまう。そしてショックを受けたウィンダミア卿夫人は、かつて母が犯した同じ過ち..すなわち不倫に走ろうとしているのを察知したアーリン夫人は、なんとかこの娘のおもいとどまらせようとする..しかし・・・
 ネタばれはやめておきますが、淀川さんの解説では最初に全部あらすじを話てしまってだいたいわかっているにもかかわらず、作品を観るとおもいきり心打たれましたねー。キーポイントは題名にもあるように「扇」なのですが、「その扇を『私のです』といえば、あなたの幸せは水の泡」・・・と思ってハラハラしながらみてました。ベルイマンの「秋のソナタ」に出てくる母娘とはちょうど反対の位置にある感じで心が暖かくなるような結末です。やはり自分のことのみ考えている人間が、ふと、人の為に自分を投げ打つという行為は、何かしら感動するものですね。サイレント映画なのに、サイレントであることを忘れました。
 ところで、この映画はスカーレット・ヨハンソンとヘレン・ハントで「理想の人」という題名で上映されているようです。静岡にも来年1月に来るので見に行こうと思っています。これは楽しみな作品です。(05.12.14)




ウエルカム・トウ・サラエボ
WELCOME TO SARAJEVO
■監督:マイケル・ウインターボトム
■出演:スチイーブン・ディレーン、ウディ・ハレルソン
1997年 イギリス映画 105分 カラー
★★★★
◇旧ユーゴスラビアの民族紛争の戦禍のサラエボを取材に来ていたイギリス人ジャーナリストの身辺をドキュメンタリータッチで描いた戦争映画。無差別に殺されて行く市民の実写の映像は衝撃的であり、戦争の悲惨を実感。
<ネタバレあり> 何気なく借りてみたのだけれど、ショッキングな映画だった。旧ユーゴスラビアの民族紛争のことは黒柳徹子の著書「トットちゃんとトットちゃん達」を読んで知っていたけれど、この映画は無差別に打ち殺されていく市民の姿が実写で撮られている半ドキュメンタリータッチの映画で、その悲惨さは目にあまるものがあった。
 ストーリーを簡単に書くと・・・サラエボの取材に来ていたイギリス人のジャーナリスト・マイケルはカメラを回しているうちに堪え難いような現実を前に戦禍の中で取り残された孤児院の子供達を助けるようカメラで訴え続けるも、本国のイギリスでは無視されるばかり。自分に何ができるのか..彼なりの救いの道は一人の少女をサラエボから脱出させて自分の養女としてイギリスに住まわせることだった。そして彼はその困難な計画を実行する。
 見終わって..人間はここまで憎しみあえるものなのかな..と思う。ラストシーンでは一人のチェロリストが丘の上の野外コンサートで演奏するのだけれど、その音楽はなんという曲なのかわからないが人間の悲哀を静かに訴えた胸に沁みるような音楽でこれまで聞いたどんな音楽よりも悲しい旋律に感じた。(2003.5.8)




WATER BOYS

■監督:矢口史靖
■出演:妻夫木聡 、竹中直人
2001年 日本映画 91分 カラー
★★★
◇シンクロを目指す男子高校生たちの青春あふれるラブコメディ。水泳の好きな人にはお薦め。




浮き雲

Drafting Clouds
■監督:アキ・カウリスマキ
■出演:カティ・オウティネン 、カリ・バーナネン
1996年 フィンランド映画 96分 カラー
★★★★★
◇不況が吹き荒れるフィンランド。貧しくても慎ましい暮らしをしている夫婦の失業から再就職するまでの困難をユーモアかつハッピーエンドに描いている。見終わったあと、心にぬくもりが残る作品。
<ネタばれあり> 不況が吹き荒れるフィンランド。イロナとラウリは慎ましい暮らしだが仲の良い夫婦。ところが不況のあおりを受けてラウリはバスの運転手を解雇される。そして同時期にレストランの給仕長をしていたイロナもレストランが買収されて職を失う。
 なんとか再就職を試みる二人だけれど、天に運をみはなされたかのようについていないことばかり。なかなか良い再就職先が見つからない。このあたりの二人の運のなさはとてもユーモアに描かれていて、かわいそうなんだけれども、ちょっぴり笑える。そこで二人はかつての同僚達を集めて、自分達でレストランを開業しようと決心する。
 今度はその開業資金集めをする二人だが、銀行からはお金を貸してもらえず、ギャンブルで大当たりを期待するも、結局全部すってしまってとうとう無一文になってしまう。
 このあたり..なんだか日本の昭和初期に「ふたりは枯れすすき〜〜♪」という歌がありましたが、そう歌ってしまいたくなるような哀れさ。でもそこに幸運の女神が現れて...。
 アキ・カウリスマキ監督がフィンランドの不況を深刻に受け止めて「映画にできることは希望を与えること」とこの作品をつくったそうだ。
 私はこの作品を見ていて、「働く事」って、それがないと人間はどうやって生きていくのか..というほど大変なことだけれど、でも、「働く事」って本当にいいな〜〜・・そう思った。ギリギリの生活とラストシーンのハッピーエンドでそう思えたのかもしれない。
 例えば、一日中ブラブラとした後に飲むコーヒータイムと、一生懸命、働いたあとに飲むコーヒータイムと・・ちょっと味が違うじゃない..という感じ。それとも、みんな、働く事に充実感を味わえる何かを持てればもっとハッピーになれるのかもしれない。
 ところでこの映画、赤のソファに青い壁..と色彩も原色でありながらヨーロっパ風レトロっぽい感じで、その色彩感覚も微妙に気に入った。




浮雲
監督:成瀬巳喜男
出演:高峰秀子、森雅之、岡田茉莉子
1955年 日本映画 124分 白黒 (BS2)
★★★★☆
 成瀬巳喜男の最高傑作と言われる「浮雲」。林芙美子の同名小説の映画化。どこまでも自堕落な男とそれについていく女。もう、有名すぎる話ですが、途中から岡田茉莉子が扮する若い人妻がでてきてそこから情痴事件にまで発展するとは・・・全く、ここまで来るのか、この男・・・という感じで見てました。(笑)にしても、最初に女が男の家に訪ねて行くシーン、玄関で家の人がとり継ぎ、そして男が出てくる・・というこの登場に思わずヒロインの心情がのりうつってドキドキしましたね。全編そんな感じで、こんな男、こんな男・・・と思いつつもこの男の「奥さん」と呼ばれたい気持ち、付き合いをやめれない女の心情がどことなく理解できる。女の方も、けして純潔な女ではなく何か親戚の叔父とのあやしげな関係は、ちょっといやらし過ぎ。まあ、それはおいておいて、そこらへんじゅうに転がってる不倫関係の話なんですけれど、ここまで他人事に思えない心情で真摯に見せるのは、やはり成瀬巳喜男の度量でしょうか。
 ラストの終わり方、ヒロインが大変いじらしくて、良かった。この終わり方でないと、なんか納得できなかったかも(笑)確かに小津作品にはない味がありますね。
 あと、戦後の闇市のセットなど、大変に凝ってて良かったです。(05.09.20)




雨月物語
監督:溝口健二
出演:森雅之、田中絹代、京マチ子
1953年 日本映画 97分 白黒
★★★★★
小津、黒沢と一緒に日本の三大巨匠といわれている..溝口健二の代表作。モノクロながら、水墨画のように美しい画像で、清閑な中にドオーン、ドオーンという地底から響いてくるような効果音が、この世かあの世か..というような幻想的な雰囲気のする作品。
 ストーリーは古典文学なので、多分よく知られているものではないかと思いますが、戦国の時代、琵琶湖の近くで陶工としてコツコツと働いて生活をたてていた源十郎は一獲千金を狙って都で陶器を売ろうと 琵琶湖を渡ろうとするが、途中で海賊が出るという噂を聞き、最愛の女房と子供を残して義弟夫婦と行く事になる。都では陶器は飛ぶように売れるのだが、彼はそこで、大きなお屋敷に住む美しいお姫さまとその乳母に怪しい誘惑を受け、最愛の女房の面影を残しつつも、そのまま、そのお屋敷に住み着いてしまう。さて、そのお姫さまというのは、実はこの世にはもうすでにいない人であった...。あやうく命まで奪われかけたが、ある僧の力を借りて、命からがら逃げ帰ってくる源十郎が家にたどりつくと、女房が優しく出迎えてくれるのであった。しかし、翌朝、彼女が戦に巻き込まれ殺されてすでに死んでいたことを知る...
 田中絹代が、源十郎に堅実な女房役を演じているのですよ。それでもって、源十朗もけして不貞な人柄には見えない良い夫のように見えるのですが..人間ってどこでどう惑わされるか、わかりませんね(^^;; またそういう忠義な人物が幽霊と浮気してしまう..という話しだから、なおさら面白いのかもしれない。この源十郎の役を森雅之さんが演じているのですが、彼の映画は始めて観ましたが、源十郎の生真面目さと弱さと..とてもはまり役ではないかと思いました。彼の映画にはこの他「浮草」があり、一度みてみたいと思う作品です。
 幽霊役の京マチ子も良かった。私は小津映画の「浮草」に出てくる彼女が本当に可愛らしくて大好きな女優さんです。この映画では能面のような化粧であまりイキイキとした表情は観れませんでしたが、妖艶で悪女のような美しさがあって、最後の怒る顔も、本当のお化けになっていなくて良かった(^^;;  ここで妖怪化するメークをしてしまったら、台なしかも..そういう幽霊映画が多いですが..
 なんとなく一般的には田中絹代の女房役に同情がいくお話のようですが、私は何故か、京マチ子が演じた幽霊の妖艶さと幽霊になって出てくる女房に心奪われた作品でした。(04.06.19)




動くな、死ね、蘇れ!
ZAMRI, UMRI, VOSKRESNI!
FREEZE-DIE-COME TO LIFE
DON’T MOVE, DIE AND RISE AGAIN!
監督:ヴィターリー・カネフスキー
出演:パーヴェル・ナザローフ
1989年 ロシア映画 105分 白黒 (CS)
★★★★
 白黒の映画なのですが、1989年製作の映画。結構、良かったです。監督は無罪の罪で逮捕され8年間獄中生活をして54才で本作がデビューとなったらしい。50代の人の作品にしてはすごく青いとも思えるような若さと初恋の映画で、ホウ・シャオシェンの「風櫃(フンクイ)の少年」とかチアン・ウェンの「太陽の少年」「大人はわかってくれない」などのロシア盤というような同列の作品の感じがした。ただ、こちらの方が胸が痛くなるようなラスト。
 12才の少年ワレルカは母親と二人で貧しい生活をしていた。近所に同い年のガーリヤという少女がいるのだが、彼女とワレルカは普段は喧嘩友達なのだが何かの時にはしっかりもののガーリヤにワレルカは助けられる。とにかくこのワレルカという少年は、やんちゃでいたずらで手に負えないような不良少年。学校のトイレにイースト菌をいれて校庭を糞尿だらけにしたり、子供っぽいがあくどい悪戯が耐えない。そしていつも窮地に立たされるのだが、そんな彼をほっとけないで助けるガーリヤの存在は、観ていて本当に健気で優しいのだ。男の子と女の子ってこんなに違っていて、こんなに仲が良くて相性の良いものなのかなーと思ってみてました。そしてついに彼は自らの命さえ危なくなるような事をしでかすのだが、ガーリヤの救済でなんとか救われたように見えたのだったけれど..。ラストは衝撃的。切ないけれどいい映画でしたね。
 ところどころで日本人の捕虜がでてきて日本の民謡がこの少年の心の原風景にもなって出てくるのでなんか観ていて不思議。作品の中に日本っぽさは全く出てこないですが・・
 それにしても、ラストのラストで錯乱したおばさんが出てくるのは、ちょっと・・・(^^;;あれはなくても良かったのでは..?と思ってしまいました。
 続編は「ひとりで生きる」というのが同じ役者さんであるらしい。ちなみにワレリカを演じた少年は素人の子供。でも、まるで大人の演技のように素晴らしかったです。(06.05.29)




歌うつぐみがおりました
Ikho chachvi Mgalobeli
監督:オタール・イオセリアーニ
出演:ゲラ・カンデラキ、ジャンスグ・カヒーゼ
1970年 グルジア映画 82分 白黒 (CS)
★★★★
 ストーリーがあるようなないような感じで観ている時はあらすじがよくわからないのですが、見終わったあとなんともいえず瑞々しい作品で良かった。
 主人公はオペラ劇場のオーケストラでティンパニー奏者をしているのですが、遅刻の常習犯でもう演奏が始まっているというのに、自分が太鼓をたたく箇所になるとどこからともなく姿を表しなんとか間に合わせる..というような事をやっている人。女友達を口説いたかと思えば、仲間と飲みに行く約束を忘れていて慌ててそちらに行ったり、家で落ち着いて作曲しようとしてもはかどらず、友達は次々訪れるし、仕事場に顔を出したら、上司から遅刻の件で呼び出しされて、上司を待っている間に女の子を口説いたり、なにせ、この人はちょっと、いろいろなことをやりすぎているから、なにもかも中途半端なんじゃないかーーと観ている方も思ってしまう。けれど、どこか憎めないキャラクターなのですよね。ゴダールの「勝手にしやがれ」のジャン=ポール・ベルモンドに確かに雰囲気が似ている。
 邦題の付け方や、ラストのブラックな終わり方もすごく気に入った。アンハッピーなエンドなのにアンハッピーを感じさせない軽快さが完成度を高めているような感じでした。(06.03.27)



打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?
監督:岩井俊二
出演:山崎裕太、奥菜恵
1993年 日本映画 45分 カラー
★★★★★
 またまた、可愛い映画だった。恋する前の恋..っていうか、恋の予行練習っていうか..そういう映画。
 小学6年生くらいの少年達の一夏の経験を描いています。同年齢でも女の子は、成長が早いから妙に大人っぽくて、少年達は、まだまだ幼い感じ。「観月ありさ〜」「セーラームーン〜」にはさすがに笑っちゃった。
 でも、自分にもこれに似た時期があったっけ。小学校時代の運動会の合同練習とか隣のクラスの気になる男の子と一緒にできるから、妙にドキドキと嬉しくって...。でも、男の子の世界もこういう感じなんだ〜。知らなかったよ、はっきりいって..男兄弟とかいないから。多くの女の子はわかってないんじゃないかな。
 できたら「PICNIC」より先に観たかった。。「PICNIC」がすごく印象強くって、さすがにこちらは本物の愛だし..。
 この映画はフジテレビの「if(もしも)」という番組で制作されたらしく、ふた通りの話しの展開。少年二人がプールでクロールの競争をする。家庭内で問題がある美少女・なずなはこのレースで勝った方の少年に自分と駆け落ちすることを頼もうと心に決める..そして、映画の中では、二人の少年がそれぞれ勝った場合のストーリー展開を見せる。ことの背景には、花火大会の日であり、打ち上げ花火は丸いのか、平べったいのか..という少年達の論争があって、花火を横から見よう..という冒険の計画と、少女との駆け落ちの約束が交錯するから、少年の揺れる気持ちが観ていて面白い。
 そして、少女との駆け落ちをあっさり断る少年と、結局、少女の駆け落ちに付き合って、とことん振り回される少年と..やっぱり、後者はすごく面白い展開になるわけです。
 少女は少年に、「私が夜のお仕事をしてあなたを養ってあげるわよ・・」といいつつ、結局、この駆け落ちは少女の気紛れで途中で頓挫するのですが..
 ラスト近くのプールのシーンはさすが岩井俊二ですね..見せます..って感じ。
 今まで知っている子供の映画の中でベスト1というわけではないけれど、こういうセンチな映画があってもいいんじゃないかな..。何か、忘れていたものを思い出させてくれる映画でした。 (04.04.02)




美しい夏キリシマ
監督:黒木和雄
出演:柄本佑、小田エリカ、原田芳雄、香川照之
2003年 日本映画 118分 カラー
★★★☆
 戦争映画っていろいろあって訴えたいことを表現するのは難しいと思うのですが、これは、「美しい夏キリシマ」という題とはうらはらに、爽やかさなどかけらもなく、ひたすら後味の悪さを感じた映画だった。
 黒木監督の実体験にもとづいて描かれた作品で、15歳の少年、日高康夫(柄本佑)は大地主の祖父母に世話になっていたのだが、働いていた工場で空襲に見舞われ、親友が被爆死するのを目の当たりにする。以来、一人生き残ったことに罪悪感を抱いてしまい、それが原因で体を壊し、彼は学校に行けなくなっている。そんな康夫をもと陸軍だった祖父は「非国民」とつらくあたる。
 そして康夫を取り巻く人々のそれぞれの戦争と戦争の終結(敗戦)を描いているのだけれど、どれもこれも悲劇というのではない.。なんとも煮えきらない、苦い後味の残る話である。例えば石田えりが扮する貧しい戦争未亡人と中国で恐らく極悪非道な戦争行為をしてきたであろうと思われる兵隊がひたすら男と女の快楽に酔うところ..また女中のはるが足を亡くした帰還兵とお見合い結婚させられ..相手の男性に「俺は幽霊だから、もっといいところに嫁げ」などと言われるところ...そして究極は、主人公の康夫である..「殺せ、殺してくれ」と懇願する断腸の思い..これが敗戦を期した日本の姿だったのかなあ..と思う。全くどの人もこの人も希望のないみじめな姿であるけれど、戦争をしてきた国のこれが結末なのかもしれない。
 主役の柄本佑は柄本明の息子さんだそうで、お父さんと雰囲気も似てて、個性があって良かった。小田エリカや原田芳雄も○。ただ、石田えりと香川照明の男女の話しは、なんだかな〜..とことん汚れ役で、個人的のはちょっとこの作品自体にいい印象を持てない感じになってしまったのが残念。(05.01.26)




生まれてはみたけれど
■監督:小津安二郎
■出演: 斎藤達雄、吉川満子、突貫小僧
1932年 日本映画 91分 白黒 サイレント
★★★★★
◇サラリーマンの家庭に育つ兄弟の笑いあり、涙ありのお話。日本映画最高峰の傑作といわれるのにも納得




海が聞こえる

■監督:望月智充

1993年 日本映画 72分 アニメーション
★★★★
◇東京から高知へ引っ越してきた転校生の彼女をめぐって僕と僕の友人の青春ラブストーリー。バブル時期の感覚が妙に懐かしい。ジブリアニメの一作品。




海を飛ぶ夢
MAR ADENTRO
THE SEA INSIDE
監督:アレハンドロ・アメナーバル
出演:バビエル・バルデム、ベレン・ルエダ
2004年 スペイン映画 125分 カラー (CS)
★★★☆
 「死」を扱った重い映画です。実話を元にしているらしい。四肢の自由が効かず首から上しか動かない主人公が「尊厳死」を求めて裁判や世論と闘う姿を描いているのですが、「尊厳死」・・つまり、自ら「死」を望むこと。すなわちは自殺でもあるのですよね。
 主人公のラモンは船乗りで世界中を旅したことのある健康な若者だった。しかし19歳の時に、海に飛び込んだ時に首を強打し首から上しか動かない一生の障害を負う。ベッドに寝たきりのまま、それでも暖かい家族の看護によって生きながらえた彼は20数年たって自ら「死ぬ」ことを選択する。その気持ちを判ってあげることのできる家族や友人を持ちながらも誰も本当に彼に死を与えることはすなわち法律上では「犯罪」になるわけだから手が下せない。
 どんな障害を持とうとも生きることには価値がある..と私たちは知らず知らずのうちにそれが正しい感覚だと思っている..けれど、それは宗教的な指針なのかもしれない。少なくとも、ラモンはそう言い放つ・・「そんな宗教的な指針には従いたくない。本当の意味での自由になりたいんだ」と。彼の死にたい理由はただひとつ。。「動けない」から。しかし彼はしゃべるし、見えるし、口で字を書き詩をつくり音楽を聞きテレビも観れる。彼を世話しているお兄さんの家族は、本当に彼の手足になって動く。彼はあれをとってこい、こうしてほしいと命令するが、誰も文句も言わずきちんと動くし、不満も言わない。心から彼を愛している。お兄さんは「死にたい」という彼に切れて「俺の家族こそおまえの奴隷だ!なのに、『死にたい』なんて!」と叫ぶ。私は観ていて、事実は彼のお兄さんの言う通りじゃないかと思った。この主人公はいくら障害者だとはいえ、ちょっと自己中心的じゃないか??と。
 もし身体に痛みがあるのなら、それに苦しむのなら、早く亡くなった方が楽かもしれない..。しかし、そうでないのならば..??
 でもラモンは世界じゅうを旅した人だった。そういう根からの自由人が全く動けなくなった時、身体の痛みの前の精神的な苦痛というのは、本人にしかわからぬことなのかもしれない。もし、私が今、動かぬ身体となったら、毎日、今のようにテレビで映画を観て暮らせるか・・?きっとNOだと思う。動けないからベッドで映画を観て楽しめ..なんて、そういう、問題ではない。きっと身体が動けなくなったら車椅子で世界じゅう旅しようと本気で思うかもしれない。家でじっとしているなんて息がつまりそうだ。今、家にじっとして居るのは、自由だから、なんの弊害もないから、できることかもしれない。
 映画のつくりとしては、もうひとつ説得に欠けるような気もした。しかし「死」を扱ったテーマとしてはいろいろ考えさせられる事はあったと思う。(06.03.12)




埋もれ木
監督:小栗康平
出演:夏蓮、浅野忠信
2005年 日本映画 93分 カラー (静岡サールナートホール)
★★★
 前からとても楽しみにしていたので見に行ったのですが、体調が悪く、薬を飲んでいったのが悪かったのか、眠くて眠くて、それでも必死でみていたのですが、映画自体がものすごく抽象的な映画で、本当に映画を見ているのか、それとも夢なのか、画像がとにかく美しくて、ストーリーが全くわからないまま最後まで見終わってしまった。あまりにも残念だったので、パンフレットを買ってストーリーを読んでみようと思ったら、それこそ、ストーリーなど特にはない映画だったのでした。とにかく印象に残っているのは、まちという高校生の女の子たちがストーリーをつむいでいく最初の場面、紅い夕日に向かって走る馬、座り込んでいる老婆、パブのママらしい母と喧嘩する少年、ラクダと大勢の人たち、クジラの絵、古代の木々、紅い紙灯籠の馬が夜空に上っていく美しい映像、灯籠があがったと歓声をあげる浅野忠信のアップ・・・・など。
 ある山村の村人たちの幻想というか・・・とにかくよくわからない映画でした。監督は「言葉以前に私たちはイメージで世界を見ているといっての過言ではない。幼児は絵本から表現に触れ親しむ」といっていることから感じることは、確かに、まだ1〜2歳の頃、母や、家の中、おもちゃ、お風呂屋さん・・・などとても断片的にものを見ていたような記憶がある。大人を見上げていたし、家は大きかったし、天井には何か模様があった・・・というような漠然とした記憶の断片。それに近いかも。ある意味、それはものすごくプリミティブなところへ到達している作品なんじゃないかと思う。
 レンタルで出たらもう一度しっかり見てみたいです。(05.09.29)




運動靴と赤い金魚

Bacheha-Ye Aseman
■監督:マジッド・マジディ
■出演:ミル=ファロク・ハシェミアン
1997年 イラン映画 113分 カラー
★★★★
◇お兄ちゃん、がんばれ!ひたむきさがかわいい